輸送にも「売り切れ」がある

 今回の事態は、宅配便という一般消費者におなじみのカテゴリーだったため、大きく報道されたが、物流業界全体に目を転じれば“氷山の一角”である。ヤマトに限らず、国内物流量の9割を担っているトラックはどこも深刻なドライバー不足に苛まれている。

 トラック産別労働組合、運輸労連の難波淳介委員長は「輸送にも“売り切れ”があることを広く認識するべき」と語る。

「ヤマトに限らず、トラック運送事業者の多くは、荷主からお願いされると無理をしてでも運び切ってしまっていた。今回の件は単にヤマト労使の問題にとどまらず、社会全体で物流をどうしていくのかというテーマを孕んでいる」と指摘する。

 折しも、政府の「働き方改革」で残業時間の上限規制を巡る議論が大詰めを迎えている。トラックドライバーを含む自動車運転者はこれまで、36(サブロク)協定の適用除外となってきたが、今回の規制ではトラックも適用される方向で議論が進んでいる。

 筆者もこの動きに賛成だ。たしかに、現状の勤務実態からすればハードルが高く、一定の猶予期間を設けることは必要だ。しかし、引き続きトラックが例外業種となれば、ドライバー職は長時間労働職種としてさらに敬遠され、ドライバー不足はますます加速するだろう。

 トラック業界の労働環境を改善していくためには、荷主企業の理解と協力が不可欠だ。輸送力を“湯水のように”使うことができた時代は、いまや完全に終わりを告げた。これからの物流戦略は、輸送力に限りがあることを前提にして構築していかなければならない。その切り替えができない荷主企業は競争力を失っていくだろう。

(『カーゴニュース』編集長 西村 旦)