宅配ドライバーの過剰労働問題で揺れる宅配便最大手、ヤマト運輸で、今度は巨額の残業代未払いが明らかになった。この問題を伝えた記事(朝日新聞3月4日付け)は、ヤマトが違法なサービス残業の常態化を認め、グループの約7.6万人の社員を対象に未払い残業代の調査を始めたとしている。未払い分の支給額は数百億円にのぼる可能性があるという。関係者が指摘するのは、違法な長時間労働を常態化させていたとして昨年末に書類送検された広告最大手・電通との類似性だ。(ダイヤモンド・オンライン編集部)
昼食休憩もせずに配送
支店に戻ってサービス残業
ヤマトは「第2の電通」になるのではないか──。そんな見方は、労働問題に詳しい関係者の間では少し前から広がっていた。
きっかけは昨年11月、ヤマトの元セールスドライバーの男性が弁護士や労働組合関係者とともに厚生労働省で会見し、違法な残業の実態を告発したことだった。
「ヤマトがアマゾンの荷物を取り扱うようになって、体感では荷物が2~3割増えたが人手が足りていない。現場は本当に苦しんでいる」
男性が勤務していたのは、横浜市内にある神奈川平川町支店。
支店ではドライバーに「ポータブルポス」と呼ばれる業務用の携帯端末を配布し、ポータブルポスの稼働中を労働時間として記録していた。ドライバーたちは配送を終えて支店に戻ると、入金処理をしてポータブルポスから1日の稼働データを取り出し、上司に提出する。本来は、ここでその日の業務は終了する。
だが、実際は違った。ポスを切った後、支店での残業が課せられていた。伝票作成依頼の入力など翌日の配送準備、貴重品の付け合わせ、新規の荷主に関する「お客様データ」の入力……。こうした業務がほぼ毎日あり、終了しなければ退勤できなかった。このほか、1日60分と定められている昼食休憩も形骸化し、ドライバーたちは休憩を削って配送に打ち込んでいたという。