例えば、仮設住宅の建設が始まったが、入所するには条件があったり、ある程度資産が残っている人は自分のお金で仮設住居を買うことを求められたり、順番待ちが長すぎたり、優先順位に矛盾があったりと、苛立ちが募るばかり……。自炊している避難所や集落では調理する女性たちが毎日の炊き出しに追われ、極度の疲労や強いストレスを感じていたり、プライベートがない為にストレスを抱えていたり……。

 徐々にメンタル面での問題が増えてきている。こうなってくると、俺たちみたいな素人には何もできなくて、心の専門家しか支援できない……なんて感じがちだけど、そうじゃないと俺は思う。

 今、目の前ある問題はとても大きな問題だ。船の問題にしても、がれき撤去の問題にしても、仕事の問題にしても、仮設住宅の問題にしても解決には多くの時間を要するだろうし、俺たちが直接どうこうできるものじゃないものも多い。でも、だからといって支援活動をあきらめる理由にはならない。

 今、俺たちがやらなくちゃいけないことは、被災地の方々と東北復興のプロセスを共に積み上げていくこと。今、自分ができることをして、少しでも被災地の方々の心のケアをして、少しでも被災地の方々の負担を減らし、プラスになる行動をし、勇気づけ、元気づけ、希望や見通しに繋げること。そういうことだと思う。

 やはり、大きな問題はすぐには解決できないし、急には良くならない。しかし、どんな暗闇でも前に進まないで立ち止まっていては、風景は何も変わらない。どんな暗闇の中でも一歩ずつ、一歩ずつ、確実に前進することが重要になってくる。だからこそ、被災地の方々と共にその一歩を踏み出し、支援をすることが大事なんだと思う。

 でも、心も体も疲れきった状態では、中々その一歩は踏み出せない。歌でも、お祭りでも、ヒアリングでもいい。被災地の方々の心に明かりを灯し、少しでも元気づけるんだ。

「そんなことじゃ何も変わらない」「根本的な問題は何も解決しない」なんて声が聞こえてきそうだが、こうした活動の1回1回の積み重ねが人々の活力や希望になり、復興への原動力になっていくんだと俺は思う。