
自動車や精密部品など製造業向けの人材派遣や請負サービスを展開するnmsホールディングス(東証スタンダード上場)前社長で大株主の小野文明氏が、河野寿子社長ら現経営陣に反対する株主提案を出した。小野氏は昨年12月、635万円の経費不正使用などがあったとして社長職を降ろされたが、「私の追放ありきの調査だ」と主張。会社と前社長が真っ向から対立する“内紛”の真相を暴露した。(フリーライター 村上 力、ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
製造業向けに人材派遣、製造受託
グループ約1万人の大手で内紛勃発!
――小野さんが昨年12月まで社長を務めたnmsホールディングス(HD)は、どういったビジネスモデルの会社なのでしょうか。
自動車や精密部品などさまざまなメーカーを顧客とし、人材派遣や請負、製造受託・開発などの事業を国内のみならずグローバルに展開している企業です。自社工場も国内外に持ち、従来の派遣業者とは一線を画したビジネスモデルで顧客の信頼を勝ち取ってきました。
私は前身会社の経営を引き継ぎ、2002年から社長を務めました。当初は製造業の人材派遣がメインでしたが、顧客から製造ラインを任せられ、それが発展して自社工場で製造委託を受けるようになりました。近年は海外展開に注力し、中国、マレーシア、ベトナム、メキシコなどに製造拠点、タイに委託拠点があります。08年ごろの売上高は100億円程度でしたが、直近は800億円規模となり、その半分を海外拠点が稼いでいます。
既存の大手メーカーは自社製品しか作らない。だから需要が頭打ちになると工場稼働率が下がり、赤字となってしまう。しかしnmsHDの場合、さまざまなメーカーから受注しているため高い工場稼働率を維持できます。また製造人員を教育して多能工化し、顧客の需要に柔軟に対応できる熟練度の高い人材を確保しています。
私は会社から排除される直前、定年後のシニア層に製造現場で働いていただき、人材不足を補いながら老後の生活を豊かにしてもらう取り組みを進めていました。いずれにせようまく経営すれば、まだまだ成長の余地はある。私はそう思っています。
――しかしnmsHDは昨年10月に特別調査委員会を設置し、小野さんが経費を不正使用したとの調査結果を12月に公表しています。これを受けて代表権を返上することになりましたが、私的流用をしていたのですか。
会社の経費を私的な遊興費や交際に使ったことは、天地神明に誓ってありません。それを今から説明したいと思います。
nmsホールディングスの発表によれば、会計監査人のあずさ監査法人から小野氏の金銭私的流用に関する情報が寄せられたのは昨年8月のことだ。その後、監査等委員会が調査し、10月には外部弁護士らで構成される特別調査委員会が発足した。これについて小野氏は「私を追放するための調査だった」と主張する。一体どういうことか。次ページで明らかにする。