「出資比率は?」隆嗣が矢継ぎ早に次の議題を提出する。
「五分五分で考えている」
即答した李傑へ首を振って見せた隆嗣は、緩やかな口調で責めた。
「駄目だ。実際に工場を運営して商品を販売する我々が、5割以上を確保することが条件だ……。設備に85万ドルを試算している。それと、開業時に必要な材料の買い付けなど、初期流動資金に35万ドル。合わせて120万ドルの投資を見込んでいる」
そこで隆嗣は、黙って成り行きを注視していた幸一を振り返った。
「しかし、彼が指摘した追加のボイラーは計算外だったのでね。そちらの現物出資に、5トンボイラーを追加して欲しい。その上で、現物出資評価額100万ドルでどうだ?」
「厳しいな。工場はともかく、ボイラー設置には現金が出て行くことになる」
「それこそ、君の政治力で解決すべき問題だよ」
李傑が目を閉じて考え込む、再び口が開くまで少々時間が掛かった。
「君は、出資比率5割以上になればいいんだろ? ボイラー込みで、こちらの現物出資評価額110万ドルでどうだ、そちらの120万ドルと合わせ、総投資額230万ドル。君は52パーセントを握れる」
腕組みを解いた隆嗣が椅子から立ち上がり、李傑へ右手を差し出した。
「その線で進めよう」
肩を並べてホテルの玄関まで見送る隆嗣に、李傑は重ねて念を押した。
「それじゃ、今夜はくれぐれも頼むよ」
「わかってるさ。お偉いさんたちのご機嫌取りに励むよ。君も上手に言いくるめてくれよ」
自動ドアの先へと李傑が姿を消すと、沈黙していた幸一がようやく口を開いた。