自信をもって「賭け」をする
1人めのインタビューの間、僕らは不安でドキドキしながらライブビデオを見ていた。でも2人め、3人めになると、笑い声や歓声さえあげた。ゲストというゲストがみな同じ反応をしたのだ。初めてロボットを見て興奮し、問題なく歯ブラシを受けとり、タッチスクリーンでお届けを確認し、ロボットを送り返した。もう一度ロボットを見たいがために、二度めのお届けを頼みたがった。ロボットと自撮りをする人までいた。でもロボットと会話しようとした人は1人もいなかった。
一日の終わりに、ホワイトボードは(肯定的な反応を表す)緑色のメモでいっぱいになった。賛否両論あったロボットの個性は―まばたきや効果音、それに「ハッピーダンス」さえ―文句なしの成功だった。サヴィオークはスプリントを行うまで、ロボットの能力について過大な期待をもたれないよう、神経をとがらせていた。でもロボットに愛嬌のある個性を与えることが、ゲストの満足度を高める秘訣だとわかった。
もちろん、すべてが細部にいたるまで完璧だったわけじゃない。タッチスクリーンの反応は鈍かったし、効果音のタイミングがずれたところもあった。それにロボットのタッチスクリーンで簡単なゲームを遊べるようにするというアイデアは、まったくウケなかった。
こうした不備のせいで、エンジニアリング作業の優先順位を見直す必要が生じたが、本番までにまだ時間はあった。
3週間後、リレイはホテルでフルタイム勤務を開始した。
ロボットは大反響を呼んだ。チャーミングなロボットを紹介する記事がニューヨークタイムズとワシントンポストに載り、最初のひと月で10億ドル相当のメディア露出が得られた。
でも何よりよかったのは、ロボットがゲストに気に入られたことだ。夏が終わるまでに新型ロボットへの注文が殺到し、生産が追いつかない状況が続いた。
サヴィオークはロボットに個性を与えるという賭けに出た。スプリントでリスキーなアイデアをすばやく試せたからこそ、自信をもって賭けができたのだ。