グーグルで開発された究極のスピード仕事術「スプリント」。グーグルとGV(グーグル・ベンチャーズ)が成功を生んできたその超合理的なノウハウを、開発者自身が手取り足取り公開した話題の新刊『SPRINT 最速仕事術』。世界で衝撃をもって迎えられ、23ヵ国で刊行の世界的ベストセラーとなっている。本連載では、仕事を「最速化」し、大きな成果を出し続けるそのノウハウについて徹底的に迫る。第5回の今回は前回に続いて日本版のイントロダクションを紹介、「スプリント」の具体的な段取りが明らかになる。

たった5日ですべてを生む「驚異の仕事術」の段取り

 ハイテク企業サヴィオークの「スプリント」の様子を紹介しよう(「スプリント」の詳細については、こちらの記事も参照)。ロボットエンジニアじゃない人も、心配はいらない。僕らはソフトウェアやサービス、マーケティングなどの分野にも、同じスプリントの手法を使っている。

 まず最初に、チームのメンバーは丸一週間の予定をすっかり空けた。月曜日から金曜日まで、すべてのミーティングをキャンセルし、メールに「外勤中」の自動応答メッセージを設定して、一つの問題に全力を注ぐことにした――「ロボットに人前でどんなふるまいをさせるべきか?」

 次に期限を設定した。ホテルとの間で、スプリントウィークの金曜日に試験運用を行うことをとり決めた。チームにプレッシャーがのしかかった。試験運用の日までの4日間で実用的なソリューションをデザインし、プロトタイプを作成しなくてはならない。

 月曜日、この問題についてわかっていることをすべて洗い出した。スティーブは、ホテルがゲストの満足度をとくに重視し、常時計測、追跡しているのだと、全員に説明した。もしリレイの試験運用中にホテルの顧客満足度が大幅にアップすれば、大きな受注が転がり込むだろう。だが満足度が変わらないか下がりでもして注文が入らなかったら、新規事業は暗礁に乗り上げる。

 僕らは重大なリスクを特定するために、「マップ」をつくった。

 マップとは物語のようなものだ。ゲストがロボットと出会い、ロボットはゲストに歯ブラシをわたし、ゲストはロボットに夢中になる。このなかに、ロボットとゲストが初めて出会う、決定的瞬間がある。たとえばロビー、エレベーターのなか、廊下など。

 では、僕らはどの瞬間に力を注ぐべきだろう? スプリントはたった5日間だから、具体的な瞬間をピンポイントで絞り込まなくてはならない。スティーブは「お届けの瞬間」を選んだ。これをきっちりやれば、ゲストを喜ばせることができる。だがしくじれば、フロントデスクは混乱した客への対応に一日中追われるだろう。

 ある大きな懸念がくり返しもちあがった。ロボットが実際以上にかしこく見えるとまずいことになる。「みんなC‐3POやウォーリーに慣れちゃってるからな」とスティーブはこぼした。「ロボットには感情や計画、希望、夢があると思い込んでいる。うちのロボットはそこまで進んでいない。ゲストが話しかけても返事は返せない。がっかりさせたらおしまいだ」