大手予備校の駿台、代々木ゼミナール、河合塾によると、いずれも浪人は理系が中心。特に医学部の受験生が代表例だ。「無理してでも勉強して医者になれば、リターンが相応に見込める」というのがその理由だ。医学部以外でも、国立大学の理系は私大に比べて学費が安く、設備が充実しており、学生に対する教員の比率が優勢なので浪人してでも入りたいという学生が集まりやすい。また、理系の入学試験は学力テストがあることが基本なので「適当に勉強して入学する」という事態が発生しにくいこともあり、自ずと浪人は理系が中心になってくるのだ。

 しかし、そうは言っても1年以上浪人する「多浪」は珍しく、あくまで「1年まで」が主流のようだ。これは、前出の統計に加え、文科省の入試対応を見ても明らかだ。2015年度の入試は「脱ゆとり教育」の最初の世代が参加した年だったため、この時のセンター試験の数学・理科は新旧の学習指導要領に対応する問題が2通り用意されていた。しかしこの経過措置は1年だけ。つまり、「文科省も浪人生はあまりいないと認識しているのではないか」(駿台・石原氏)と考えられる。

 浪人数の減少は、「親がそれを勧めない」という背景もある。

 ひとつは経済事情だ。大手予備校の受講料は年間100万円程度かかり、“浪人費用”は家計を圧迫する。

 それだけでなく、浪人へのマイナスイメージもある。今の高校生の親世代である40代前半(中心は42、43歳)は団塊ジュニアで、前述のように3人に1人が浪人生だった世代。自らが浪人を経験している人が多いため、その辛い体験が頭をよぎり、子どもには苦労させたくないと「受かった大学に行きなさい」と説得するケースが目立つそうだ。

 しかし、一概に「浪人は避けるべき」とも言えないことを親たちは知っているだろうか。むしろ、この全入時代にあえて浪人することで、より良い進学を果たすことができるケースもある。

国立に籍を置きながら
受験勉強する仮面浪人

 受かった大学に籍を置きながら、次年度の入試を受けようとする「仮面浪人」は昔もあったが、その多くは難関国立大学を目指すため、滑り止めで受けた私大に通うというものだった。

 ところが最近は、国立大学にも仮面浪人が存在する。有名どころだと、大阪大学は後期試験の合格枠が多かったため、格好の“仮面の巣”になってしまっていた(現在は後期を廃止)。今は北海道大学や九州大学が人気を集めているが、いずれも難関10大学ながら、ここに在籍し東大や京大を目指す仮面浪人生が入学している。

 もともと仮面浪人をするつもりがなくても、「入学したら雰囲気が合わなかった」「やっぱり第一志望校に行きたい」という気持ちが5月の連休頃に高まり、通っている大学を辞めずに予備校に入学を希望する「合格浪人」や、志望校のランクアップのための「選択的浪人」が後を絶たない。

 確かに志望校合格のチャンスは、昔と大きく異なる。最近ではAO入試のほか、私学のセンター試験利用試験や同じ大学内の学部統一試験、国立の後期試験など、受験の機会が圧倒的に増えているため真っ当に浪人をすれば希望の大学に進学しやすくなっているのだ。