
ダイヤモンド編集部が選定する「中小キラリ農家ベスト20」で12位となったa.baseは、事業をうまく多角化しながら増収を果たす好循環に入っている。農業事業拡大のエンジンとなっているのが米卸だ。特集『儲かる農業2025 日本の夜明け』の#15では、米卸をトリガーにして農地がどんどん広がる仕組みと、もう一つの収益の柱である飲食事業が好調な秘密と併せて、その謎をひもといていく。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
米卸と作業受託をトリガーに
農地がどんどん広がる仕組み
中小キラリ農家12位になった秋田県横手市のa.baseは、秋田銀行を退職した森谷友樹代表が2020年に設立した。地元酒造の杜氏を務めながら、農業を営んでいた父親の急死がきっかけだった。
同社は事業をうまく多角化しながら増収を果たす好循環に入っている。農業事業の内訳は、中核に据えるコメに、スイカやキクイモといった農作物の生産。他のコメ農家から集荷する米卸事業、さらにコメ農家から受け入れたもみの乾燥や調整等を手掛ける作業受託。自社生産した幻の酒米「亀の尾」を使った日本酒造り(醸造は酒造会社に委託)といった構成だ。
農作物の組み合わせは、作業の繁忙期と入金のタイミングを分散させており、人繰りと運転資金を確保する上でメリットがある。
農業事業拡大のエンジンとなっているのが、米卸と作業受託だ。この二つをトリガーに農地がどんどん広がっているが、一体どんな仕組みになっているのか?
また、a.baseには、もう一つ収益の柱がある。会社の営業利益の半分を稼ぐ飲食事業だ。運営する市内の飲食店は、2年前の店舗の規模拡大で売上高が倍増した。これは農家が小売りまで手掛ける「農業の6次産業化」に当てはまるが、既存事業者との競合は激しく、うまくいかないことが多い。同社はなぜ好調なのか。
次ページでは、この二つの謎をひもといていく。早速、確認していこう。