さらに大手企業が、資本力を武器にこの分野に参入してくる可能性もないわけではない。しかし、ソラコムは運用コストにわずかな利益を乗せて事業を行っており、ユーザー数が増えるに従い、どんどん価格を下げている。大手企業においては、投資に見合う利益率を享受しなくてはならないので、こうした利益率の低い事業に追随することは、難しいと言える。

公平かつオープンな理念を持ちながら
パラダイムチェンジを続けていけるか?

 今後のリスクとしては、第一に、国やドコモの政策でコスト構造が変わるリスクがある。現状はMVNOの促進のため、ドコモが貸し出す回線を安価で提供する政策になっているが、この状況は将来も保証されるものではない。グローバル化に際しても、各国の政策に左右される。かつてリクルートは、NTTから回線を借りて別の企業に貸し出す回線リセールス事業を行っていたが、NTT自体が回線の料金を引き下げ、利鞘がなくなり、事業も成り立たなくなったという経緯がある。

 第二に、通信の世代が変わるような技術変化、たとえば4Gから5Gに移行する際には、システムの再構築が求められる。そのようなときに、4Gを手がけていなかった新規参入業者が出現する可能性があり、一方でソラコムには、クラウド上のソフトウェア技術で優位性はあるものの、新技術と旧技術との資源配分やサンクコスト(埋没費用)の問題が発生するかもしれない。またセンサー、デバイスとの新たな無線通信規格も乱立しているが、デファクト・スタンダードとなる規格を読み間違えると痛い。

 第三にソラコムの組織的要因であるが、ソラコムのビジネスモデルでは、基盤となるプラットフォームを考えつき、それを具現化するところに最もイノベーションが必要とされる。今後同社は、同じビジネスモデルによるグローバル化とプラットフォーム周辺の開発に重点を入れていくと思われるが、イノベーションのタイプは、当初の革新型よりも改善型にならざるを得ない。その際にも、社員のモチベーションを高く維持し続けられるだろうか。

 数年おきに大きなパラダイムチェンジを経てきたインターネットの世界において、同社は「誰にでも公平に、オープンに」という理念を守りながら、自らパラダイムチェンジを起こしていけるだろうか。今後も注目されよう。

(注1)日経産業新聞 2016.12.9より

(山田英夫・早稲田大学ビジネススクール教授)