トロイカの圧力で受け入れざるをえなくなった財政赤字の追加削減策をめぐって、ギリシャの与野党が対立を深めている。国家公務員給与に、10%削減という大きなメスを初めて入れることが火種となって、早期解散を目論む野党第一党の新民主主義党からは、減税論まで飛び出す異常事態だ。

 近年、ギリシャの労働コストの上昇は著しい(図5参照)。そもそも、2010年の法定最低賃金は「月額862.8ユーロで、隣国ブルガリアの122.7ユーロの7倍」(在ギリシャ日本国大使館)である。当然、企業の競争力低下を招く。労働人口の4分の1が公務員であることもあって、コスト感覚が麻痺してしまったのだろう。

 現実はきわめて厳しい。政府債務残高は、名目GDPの166%に達した。マイナス成長に落ち込むため(図6、7参照)、債務残高比率はさらに上昇する。議会では、与党の全ギリシャ社会主義運動(PASOK)が6議席とわずかながらも過半数を上回る156議席を占めており、「造反がない限り、赤字財政追加削減の関連法案の成立は堅い」と政府幹部は見る。

 ところが、6月8日現在、関連法案は国会に提出されていない。

「仮に20日の週においても成立のメドが立たなければ、政府の財政再建能力への懸念が高まり、格下げが実施される公算が大きい。そうなれば、7月初めに予定されているIMFとユーロ圏諸国からの120億ユーロの融資実行が先送りされるだろう」と、野村證券金融市場調査部の岸田英樹シニアエコノミストは最悪のケースを想定する。

 それでも土壇場で最悪のケースは回避される──ギリシャやフランスの銀行界においては、楽観論が支配している。岸田氏のメインシナリオもそうだ。120億ユーロの融資なくしては、8月20日に控える元本66億ユーロのギリシャ国債の償還すら危ういからだ。

 パパレンドゥ政権が議会をまとめる力量を見せつければ、昨年5月に決定した1100億ユーロの金融支援とは別の追加支援をトロイカから引き出す道筋をつけることができるかもしれない。

 民間シンクタンクのストウナラス理事長は、「目標である2012年どころか13年でも、国債市場復帰は難しい。(この2年間で償還しなければならない国債発行額に等しい)約600億ユーロの追加支援が必要であろう」と言う。