英語メディアが伝える「JAPAN」をご紹介するこのコラム、今週は震災3カ月の様々な事柄についてです。東京電力に対する政府支援策のこと、6月11日に各地で行われた脱原発デモのこと、原発に依存してきた日本社会のこと、進まない被災者支援のこと、それでも日本の復興ぶりを「すごい!」と称えてくれる外国の人たちのこと。(gooニュース 加藤祐子)

東電を支援することにしたが

 東電に対する政府支援が閣議決定されたのを受け、大変なことになっていた東電株が一転ストップ高をつける状況でこれを書いています。東電に対する政府支援決定はBBCを始め英語メディアも速報。支援決定を受けて東電株価が一気に値上がりしたことも、ブルームバーグ通信など経済系英語メディアはもちろん速報しています(ロイター通信によると、東電社債を買っているのは主に外国ヘッジファンドや外国人投資家だとか)。

 ちなみに、政府の東電支援が決まったと伝えられたその頃、私は米共和党の大統領候補7人が参加したCNN討論会を観ていたのですが、そこで各候補は口を揃えて、ブッシュ政権とオバマ政権による金融機関救済と自動車産業救済を批判していました。「政府が金を出して救済するのではなく、通常の破産法手続きを経るべきだった」(ミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事)などと。いかにも共和党候補らしい意見です。候補だからそう言えるのであって、現職になってもビッグスリーやAIGを倒産させられるのかは疑問ですが、それはともかく。

 そういう発想からいくと、国内総生産(GDP)の2倍近くにもなる政府債務残高を抱える日本政府が、東電を救済をするというこの決定を、共和党の彼らがどう思うか、聞いてみたいものです。「Too big to fail(つぶすには大きすぎる)」なんてものはないんだと、金融機関や自動車会社について言い放った彼らが日本の政治家だったら、東電についてどう言うのか。ちなみに英紙『フィナンシャル・タイムズ』のアジア編集長デビッド・ピリング氏は4月の時点で、「東電に比べればリーマンは些細な話」と書いています。「現代日本は実に、東電がなくては機能できない」、ゆえに「日本の原子力産業は今後おそらく、利益の私物化と損失の社会化の事例として、欧米金融機関の仲間入りをするのだろう」と。

 さらに言えば、この討論会では話題になりませんでしたが、今回の大統領選ではどうも「小さい政府」をことさら強力に掲げる候補が共和党サイドに並んだようで(そうやってオバマ政権の「大きな政府」主義を批判して勝とうという戦略なのでしょう)、彼らの発想でいくと国家の機能のほとんどは州政府(日本でいう都道府県レベルですね)と民間に任せればいい、連邦政府は戦争と外交だけ責任をもてばいいということになる。とすると、もしアメリカで東日本大震災のような大惨事があったら、救助・救援は州政府と民間に任せればいいと、そういうことになるのだろうかと疑問に思っています。ハリケーン・カトリーナの時はあれほど、連邦政府の対応が遅いと世論は批判したのに。

仮にカトリーナほどではなくても

 ハリケーン・カトリーナの時のブッシュ政権と、今回の菅政権の対応を比べて、どちらが遅いか速いかを競っても仕方がありません。まだ菅政権の方がマシではないかと思いたくても、原発事故がある以上、被害の質が違いすぎます。それにブッシュ政権と比べてどうだったところで、東日本大震災と津波、そして福島第一原発の事故から3カ月。事態は素早く適切に人々の期待する通りに進捗している——などと言う人はいないと思います。AFP通信が震災から3カ月がたって「Frustration rises(苛立ちが高まっている)」と配信したように、原発事故の収束見通しはなかなか立たず、未だに9万人以上が「混み合う避難所に押し込められ」、「配給の食糧を食べ、段ボールの仕切りに囲われた畳の上でテレビを見たり寝たりしている」。それにもかかわらず、政界は首相退陣をめぐって駆け引きを繰り広げ、野党の保守勢力は復興に必要な予算案を「人質にとっている」のですから。これでフラストレーションが高まるのは、当たり前です。

 そうした最中に6月11日に日本だけでなく世界各地で行われた「脱原発」の抗議行動について、AFP通信は「日本は津波から3カ月を抗議行動で刻む」と配信。「報道によると」として、日本各地の100カ所以上で抗議行動があり、都内では約6000人が参加したと。

 脱原発デモについてはロイター通信も、「日本国内で数千人が行進した」と。参加したのは「会社員や学生や、子供を肩に担いだ親たち」で、「『原発反対』や『ノーモア・フクシマ』と書かれた旗を手に、危機に対する政府対応への怒りをあらわにした」と。ロイター通信は、子供たちを連れて東電本社前にいた幼稚園職員の、「これでも伝わらないなら、こんなに危険だと分かった原子力を使うのを止めるのに、あと何が起きなきゃならないんでしょう?」というコメントを紹介しています。

 デモについては米紙『ニューヨーク・タイムズ』も「デモが日本の原発利用を非難」という見出しで報道。「主催者の推計では参加者は2万人に上った」東京のデモを始めとする日本各地での抗議行動について「支援者たちは、その規模よりも、協調性と秩序を重視する国でこれほどの集会が開かれたこと自体がすごいことだと話している」と説明しています。記事では3歳の娘を連れた女性が「子供たちのために来ました。水が安全で空気がきれいなもとの生活に戻りたいだけです」と話すのを紹介(日本語の文言は英語から私が翻訳したものです)。その一方で文末では「しかし、通りかかった人たちはそれほど熱心ではなかった」として、行進を彼氏と眺めていた21歳女性の「これで実際に何が変わるの? 楽しそうだけど、これで何かが変わると思うのはおめでたい」というコメントも紹介。バランスをとっています。

続きはこちら