公務員の危機#12トランプ米大統領(左)を支えるバンス副大統領(右)。DOGE(政府効率化省)を率いていたイーロン・マスク氏(中央)はトランプ氏とSNSで言い争いを演じるなど不仲に…… Photo:Kevin Dietsch/gettyimages

米国では、政府の幹部ポストに民間や学会から人材を登用する「政治任用」が活発に行われている。トランプ政権を支える幹部たちは、どのような制度に基づいて任命されているのか。特集『公務員の危機』の#12では、国内外の行政組織、官僚制、公共政策に精通している吉牟田剛・大阪大学招聘教授に、米国の幹部公務員の概要、人材の確保、育成について徹底解説してもらった。

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ヘッジファンド大物マネジャーである
ベッセント氏が財務長官に登用される理由

吉牟田剛・大阪大学招聘教授よしむた・つよし/1988年東京大学経済学部卒業、総理府・総務庁(当時)入庁、93年米ハーバード大学ケネディ・スクール留学、99年外務省在米国日本国大使館一等書記官(政務班)、2002年内閣官房行政改革推進事務局企画官(公務員制度改革)、04年行政改革・規制改革担当大臣秘書官(事務)、07年内閣官房内閣参事官(官邸報道室長)、17年内閣府大臣官房審議官(地方分権改革推進)、20年総務省情報公開・個人情報保護審査会事務局長などを経て、23年4月から24年9月まで政策研究大学院大学教授。17年より大阪大学招聘教授。

 主要国の公務員制度は、いずれも、制度上、採用に当たって公開された競争試験に基づき、昇進についても成績主義に基づくという「メリット・システム(競争職)」を基本としている。一方で、幹部公務員、特に補佐的な職、あるいは高い専門性を必要とする職についてはメリット・システムの例外となる「競争除外官職(除外職)」が担うことが多い。

 米国の政治任用制度は、選挙で選ばれた大統領が、自分が公約した政策を実行するために外部人材を自由に任用できる仕組みと考えることができる。メリット・システムは適用されない。

 米国では、1883年にペンドルトン法が制定され、競争試験で良好な成績を収めた者を連邦公務員に採用し、昇進においても専門能力・成績・資格などを基準とするメリット・システムが始まった。当初、大きな郵便局や税関の職員など約1割が対象とされ、徐々に拡大したが、同時に、除外職も増加し、現在、連邦公務員の半数以上が伝統的なメリット・システムから除外されている。