「白くてダサくてカッコ悪い」。そんなイメージを覆す、カラフルでオシャレなステテコが今年、大ブレイクを迎えている。
そもそも、これら新生オシャレステテコが注目され始めたのは2~3年前。当時は「物珍しい」「面白い」との評価でプレゼントや景品として買われることが多かったというが、はき心地のよさでリピーターが増え、昨年一気にブレイク。今年もその勢いは衰えることを知らず、さらなる人気につながっている。
蒸し暑い日本の夏において、汗を吸い取ってくれるステテコには、スーツを汗染みなどから守ってくれる魅力がある。「もう一枚はいたら余計暑くなるのでは?」と思われがちだが、ベタつきを抑えてくれるため、はいてみると却って快適に感じるという。また、新生ステテコはそうした「ズボン下」としてだけでなく、そのまま部屋着にも使えるとして、老若男女からの支持が高まっているのだ。
2009年からブランド横断型の集積コーナーを作り、ステテコの“面”での展開を始めた東武百貨店 池袋店では、昨年3~8月で7000枚を販売。今年は同期間で10000枚の販売目標を掲げる。伊勢丹新宿店メンズ館では、需要の山が来る父の日を前に、前年の3倍で売り上げが推移するという。
中でも「圧倒的な人気」(伊勢丹)を博しているのが1938年創業の老舗下着製造販売会社、アズのブランド「steteco.com(ステテコドットコム)」だ。
ステテコブームの火付け役として名高いsteteco.comの誕生は、武村桂佑・アズ取締役が入社当時、先輩からいわゆる従来ステテコを渡され、はき心地のよさに感動したところに起因する。友達にも勧めてみたところ、同じく評価はよかった。ただ、誰もが口にするのが見た目の悪さ。物理的な形、イメージ共に「モッチャリしており、いい商品なのに時代の変化に取り残されていた」(武村取締役)。
いかに見た目をスッキリさせながら着心地をよくするか。それを実現するべく、steteco.comは老舗企業のノウハウと経営資源をフル活用しながら、従来ステテコの代表素材である綿クレープ(ちぢみ。布面にしぼ<波状、粒状の凹凸>があって肌にくっつきにくく、生地自体に伸縮性があって着心地がいい)を使い、しかもMade in Japanであることにこだわる。
加えて、販路も工夫した。steteco.comを設立し、本格的に新生ステテコを押し出した2008年当初は、肌着売り場ではなくwebやミュージアムショップ、セレクトショップ「ユナイテッドアローズ」で展開。若者など、ターゲット層拡大の足掛かりを作った。
昨年から参入企業が相次ぎ、女性用や子供用商品も増加、すっかり定着してきた新生ステテコ。メーカー側で販売競争が激化するのはもちろんだが、取扱店が増えているだけに、今年は小売り側の調達競争も生じる可能性がある。
現にsteteco.comは今年、2009年比3倍に急増した販売数のさらに1.5倍の製造を計画したが、現在それを上回るペースで売れており、同社のオンラインショップでは品切れとなる商品が多いという。
各社が売り上げを増大させるには、人気商品を「何枚用意できるか」(小売り業界関係者)が勝負となりそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)