これでは事業として成り立たない――。事態を察知した十河会長が、急遽、コスト見直しの大号令をかけたのだった。
またしても火の海
発売日まで1ヵ月半を切っている。私が助けに入らなければ間に合わないのではないか、と思いつつも、ためらいがあった。既に契約期間を終え、別の仕事も始まっており、ボランティアで時間を割くのはきつかったからだ。
しかし、悩みに悩んだ末、腹をくくった。最後までやり遂げなければ、「人口5万人の過疎の町で、全国に通用する土産物を作る」という志に共鳴してくれた方々に申し訳が立たない。
とはいえ、さぬきとの調整作業は手間取った。メンバーの仕事時間がまちまちで、電話がつながらない。使い慣れていないのか、eメールも機能しない。返事がなかなか来ないし、関係者の宛先がCCで入っておらず、連絡漏れもしばしばあった。
単純なコミュニケーションすらスムーズにいかず、すれ違いが軋轢を生んだ。このままでは、らちがあかない。私も現地に飛び、顔を合わせて議論することにした。
久しぶりの会合は、またしても火の海だった。彼らにとっては未経験の仕事である上、締め切りが迫って極度のストレスにさらされていたからだろう。
ついには互いの非難が始まり、その矛先が私にも向いた。