「さぬき町おこしプロジェクト」は、さぬき市商工会十河孝男会長の強い危機感から始まった。そこには、不満が出ようが泥まみれになろうが、自分たちの手で商品開発に取り組み、全国で戦える力をつけてほしいという、強い願いがあった。(聞き手 佐々木繁範)

業績ジリ貧。市場は先細り。このままでは希望が持てないと思った

――まず、このプロジェクトを始めた背景をお聞かせください。

 さぬき市には約30の菓子事業者があるが、業績は芳しくない。過去3年で売上を数十パーセント下げたところもあるぐらいだ。他の業種も似たり寄ったりで、人口減少の中、地元市場だけに頼っていては、先細りは必至だ。

十河孝男(そごう・たかお)氏。さぬき市商工会会長。高齢者向けケアシューズを製造する徳武産業社長。2011年春の褒章にて、藍綬褒章を受章。1947年生まれ。

 引退が近い親父の代はさておき、このままでは、後を継ぐ息子の代は将来に希望が持てない。全国市場に出て行く力をつけなければならないと、強く感じていた。

 幸い、さぬき市には、四国霊場八十八箇所の上がり三ヵ寺があり、年間30万人のお遍路さんが訪れる。この地域資源を活かした土産菓子で全国展開に挑戦し、そこでノウハウを蓄えれば、他の業種にも応用できると考えた。

――プロジェクトに取り組む上で、心がけた点は?

 町おこしにありがちな、専門家に考えてもらって成果物を受け取る、形だけのプロジェクトにはしたくなかった。

 我々に必要なのは、新しいモノを生み出す力。商品開発力だ。安易に専門家に答えを求めるのではなく、汗をかき、徹底的に自分たちで考え抜くことにこだわった。