この5月、30代に向けて、偶然にも同時期に本が出版されました。資産形成のプロである朝倉智也さんが書いた『30代からはじめる投資信託選びでいちばん知りたいこと』、そして『30代で知っておきたい「お金」の習慣』を書いた、家計診断のプロである深田晶恵さん。
今回、初顔合わせのこのお2人が、不安な時代に知っておきたい「お金」や「投資」、「家計」の話を徹底的に語ります!初回は世代別にみる「残念なお金の習慣」。30代だけでなく、多くの世代の今後のヒントになること間違いなしです。
なぜ、30代は「お金」の知識が必要なのか?
――今回、偶然にもお2人とも30代向けの本を上梓されたのですが、それはなぜなのでしょうか。
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深田 私が30代に向けて本を書こうと思ったのは、ファイナンシャル・プランナーとして幅広い世代の方から相談を受けたり、雑誌や新聞の連載に読者の声が届いたりするなかで、「40代以上の人と30代の人とでは、質問の中身がまったく違う」ということに気付いたからなんです。30代は、「年金があてにできないから、老後の生活が心配」「どれくらいお金をためれば安心できるのかが分からない」など、将来への漠然とした不安を抱えているのが特徴だと思います。
朝倉 今の30代は、社会に出る時は就職難を経験していますよね。給料も、かつてのような「年功序列の右肩上がり」は期待できません。明るい話題が見出しにくいなかで、不安を募らせている人が多いのでしょう。私は第三者の投資信託評価機関代表として、セミナーの場やツイッター、フェイスブックなどを通じて個人投資家の方の声を聞く機会があります。かつてはセミナーを開くと年配の参加者がほとんどでしたが、近年は30代の方が増えています。若い世代は将来への危機意識が高いためか、とても真剣なのが特徴です。
深田 親世代や40代以上のバブル世代とは過ごしてきた経済環境がまったく違うわけですから、30代の人のお金の悩みを解消するには、従来とは違った視点でアドバイスすることが必要だと感じています。
朝倉 確かにそうですね。私は、今の30代には老後を見据えた長期的な資産運用が必要だと思っています。逼迫した年金財政の状況を考えれば、将来的に年金受給額が引き下げられたり、年金受給開始年齢が引き上げられたりする可能性は否定できません。今の若い世代は、上の世代の人たち以上に「堅実にお金を殖やすこと」の重要性は増していると言えるでしょう。
――若い世代は「お金を殖やす」、つまり資産運用が必須だと。
朝倉 はい。もっとも、「若い世代」といっても、20代ではなかなか資産運用に挑戦する金銭的な余裕は持ちにくい。30代なら投資にお金を回す余裕も出てくると思いますし、将来のことを真面目に考え始める世代でもあります。私は、そんな世代の皆さんに、リーマンショック後の世界経済の新たな枠組みをふまえた「長期投資の新常識」をお伝えしたいと思って30代向けの本を書いたんです。
深田 最近は、20代向けのファッション誌でも貯蓄をテーマにした特集が組まれていて、読者の支持率も高いんですよ。若い世代はそれだけお金に対する不安があるということなんだと思います。でも、20代で節約ばかりに目が向いてしまう人はちょっと残念。実は私は、20代には「もっとお金を使いなさい」と言いたいんです。引っ越し代くらいの最低限の蓄えは必要ですが。
若いうちに「お金の使い方で失敗しておく」というのは大事な経験ですし、社内の飲み会に出たり他部署と交流を持ったりしてワンランク上の仕事を勝ち取り、スキルを高めて収入アップを狙うほうがいいと思います。ファイナンシャル・プランナーらしくないアドバイスかもしれませんが……(笑)。
朝倉 深田さんは、「お金が貯まる3つの習慣」の1つに「男女を問わずできるだけずっと仕事を続けること」を挙げていらっしゃいますよね。これは私も同意見です。仕事と資産運用の主従関係は、あくまで仕事が「主」で資産運用が「従」。20代は自分への投資を惜しまず、仕事できちんと収入を得る力をつけておくことが大事だと思います。私も、20代のころはお金なんて貯めていませんでしたよ(笑)。