出張、旅行、久々の帰省──。人が移動するのには様々な理由がある。そこに“How”を加えたとき、目の前に初めて道が生まれる。
こんなご時世だからだろうか、このところ高速バスの進化が著しい。移動と言えば新幹線、飛行機だった人たちが、本格的な節約に取り組んでいることから、ユーザーニーズに合わせた様々な形態の高速バスが登場している。
3列シート、ビデオ完備、フルフラットシートに始まり、見知らぬ男性と隣り合わせになるのに抵抗感があるとの声から「女性専用バス」が誕生。座席数限定とはいえ、東京~大阪・名古屋間をワンコイン500円で行けるサービスまである。価格競争の激しさは増すばかりだ。
このように高速バスといえば、とかくコストパフォーマンスのよさが注目されがちだが、サービス面での取り組みも目が離せない。我々ユーザーとしては、用途に応じた選択肢が増えたことになり、うれしい限り。ソフトとハードの両面から、サービスの質が底上げされている。
2010年夏からWILLER EXPRESSが運行しているCOCOON(コクーン)は、東京~大阪間を9800円~1万2800円で往復する豪華バスだ。車両内のシートは両側2列。ほぼフラットになる座席には全身を覆うシェルが装備されており、完全にプライベートが確保される。
ルートは今のところ東京・横浜~京都・大阪ルートのみだが、その全行程に無線LANが提供されており、座席設計と併せてビジネスマンの強い味方となりそうだ。
クラウドサービスに代表されるように、“いつでもどこでも”が合言葉となっている昨今のビジネスシーン。時間と場所を問わず、高いクオリティを求められる。
「メールを見られる環境にありませんでした」はただの言い訳。その環境を自ら選ぶ(つくる)ことも、いわゆるビジネスセンスに含まれるのでは。
さらには、移動時間の短縮が準備不足や焦りを生むとは考えられないだろうか。じっくり考えたい、心が余裕を求めるときほど、新幹線や飛行機にはないゆったりした移動空間を選んでみてはいかがだろう。
(筒井健二/5時から作家塾(R))