この季節にお茶屋さんを訪れると直接手渡されることもあったり、言付けたりと受け取り方も様々で、男衆さんと言われる身の回りの世話をしてくれる人が芸舞妓から託され、配り歩いたりもします。ご贔屓からすると、沢山の団扇が届くほど贔屓にしている芸舞妓が多いということの証のようです。

 お料理屋さんなどは出入りの芸舞妓衆も多いことから、何十枚と団扇が集まるのでそれぞれに工夫をして竹筒に並べて差したり、壁に留めたりして、夏の到来を告げるお店の飾りとして使ったりもします。

 6月というと半期が過ぎ、これから暑い夏が訪れます。「暑さをしのぐために団扇でもお使いください」というささやかな気遣いを、季節感を込めて贈るというなんとも粋な行いなのです。大層でもなく、それでいてインパクトもあり。自分の存在をしっかりと伝えるというとても素敵な習わしです。

 贈る側も仰々しくなく、贈られる側も嬉しく受け取れる、そんな気がします。梅雨どきのすっきりしない空模様でも団扇が届くと、「もう夏だな」とちょっと嬉しくなるものです。世間ではお中元のシーズンに入り、あれこれと相手に合ったものをと悩ましい頃でもあるのですが、花街では定番の団扇が季節感とともにお礼の意味を込めて届けられるのでした。

 ビジネス界でも贈り物というのは大事な意味を持っています。気持ちが伝わる逸品を選ぶのはひと苦労ですが、時々のメッセージがうまく伝わるようにしたいものです。飾り気のない一枚の団扇ですが、なんとも粋な贈り物ではないでしょうか。