「東北地方の小売り関係者は動揺するだろう」(小売業関係者)というサプライズだった。

6月29日、東京都内で経営統合を発表したアークス横山清社長(左)とユニバース三浦鉱一社長

 6月29日、食品スーパー業態で北海道トップのアークスと、青森県を地盤とするユニバースが今年10月に経営統合すると発表したのだ。

 売上高(2010年度)は、アークス3036億円、ユニバース1025億円で、単純合算すると4000億円を超える。食品スーパーでは、ライフ4808億円に次いで、年商第2位企業の誕生となる。

 関係者が動揺したのは、両社ともに今すぐの経営統合など必要ない優良企業だからだ。

 アークスは北海道内では、イオン、コープさっぽろを抑えてシェア争いでトップを独走。かたやユニバースは、5期連続で増収増益を達成(経常利益ベース)しており、一般的に売上高営業利益率が1~2%台という薄利な食品スーパー業態にあって4%を誇る高収益体質だ。そんな2社の経営統合とあって、小売り関係者には予想外の出来事だった。

 統合に踏み切った理由について、ユニバースの三浦鉱一社長はこう説明する。

「業績が好調な今は、たしかに他社との統合は必要ない。しかし、売上高1200~1300億円までは何とか成長できると思うが、その先、今の倍の2000億円まで成長させるための絵が描けなかった」という。

 ユニバースは現在47店舗を展開。そのうち3分の2が青森県内、残りの3分の1を岩手県に出店している。成長するため、仙台への進出に意欲を持っていたが、先行しているヨークベニマル、イオン、生協がいい立地に出店しており、後発企業が新たに出店する余地がないのだ。

 もう一つの背景には、イオンがユニバースに食指を伸ばしていたことが指摘されている。

 売上高約5兆円のイオンと約1000億円のユニバースでは、イオンがユニバースを飲み込む経営統合になることは火を見るより明らかだ。

 青森県内では、イオンでさえも近隣に出店できないほど、競争力の強い店舗を展開するユニバースにとって、巨大資本の傘下入りという発想は取りづらかった。

 それよりも、自社と同様に北日本を地盤とし、ローカル小売業の雄として名を馳せてきたアークスのほうが親近感を感じやすかったというわけだ。

 国内小売業界は今後、少子高齢化に伴う市場の縮小や、原材料高騰に伴う商品調達など、年商1000億~2000億円企業が単独で生きていくには厳しい事業環境が待ち構えている。優良企業同士という合併が実現したことで、これが呼び水となり、連鎖的な再編が起きる可能性は高い。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)