野良猫の避妊去勢は猫の殺処分を減らすために重要

石黒謙吾(いしぐろ・けんご)
著述家・編集者 1961年、金沢市生まれ。著書には、映画化された『盲導犬クイールの一生』『2択思考』、“分類王”の『図解でユカイ』他、『エア新書』『短編集 犬がいたから』『どうして? ~犬を愛するすべての人へ』など幅広いジャンルで多数。近刊著書は『分類脳で地アタマが良くなる』。プロデュース・編集した書籍も、ベストセラー『ジワジワ来る○○』(片岡K)、『ナガオカケンメイの考え』(ナガオカケンメイ)、『負け美女』(犬山紙子)、『ネコの吸い方』(坂本美雨)、『犬と、いのち』(渡辺眞子) 『マン盆栽の超情景』(パラダイス山元)など200冊以上。■ブログ http://www.blueorange.co.jp/blog/

石黒 うちの周り、世田谷ですが、地域猫で大変そうな猫を見かけると、胸が痛みます……。

本庄 私が京大時代に見た近所の猫は、病気に感染して目がぐちゅぐちゅになってました……。そんな光景を見て、自分で治療代を出してなんとかしたいと思っても、4年で2万匹! みたいな現状ではもうどうしようもないですから。

石黒 そして、近所から苦情が役所に出始めたりして、保健所に持ち込まれてしまいますよね。

本庄 日本の例でいうと、少し前のデータですが、殺処分される猫のうち、子猫の割合がなんと60%なんです。繁殖に対して、譲渡が追いついていないということがわかります。

石黒 そんなにも子猫なんですね!

本庄 はい。なので、逆に言うと、ドイツのように、野良猫に避妊去勢手術を徹底していけば、殺処分される猫の数が一気に4割になるということなんです。

猫派の政治家クナウフさんに撫でられる黒猫(ドイツ)

石黒 うちの猫「コウハイ」は、生まれて間もなく兄弟3匹で捨てられていたところを心ある方に保護され、保護団体「ミグノン」へ行きましたが、最初やはりあまりに虚弱だったようで。

本庄 そんな小さいときなら無理もないですね……。

石黒 そして生きていけるかわからないと思われて、本当にもうダメという生死の境から蘇生したんです。だから、献身的な看護してくれた代表の友森玲子さんは掛け値なしの命の恩人というわけです。で、犬のセンパイと健やかに暮らしているうちに信じられないぐらい大きくなったのですが(笑)。

本庄 写真でも大きさがわかります(笑)。去勢はされたんですか?

同じポーズで並ぶ、コウハイ(上)とセンパイ(下)

石黒 外には出せないのですが、いろいろ考えました。センパイも、子どもを残すことも考えて悩みましたが、避妊手術はしました。

本庄 私も、動物保護の研究に関わり始めた当初は、動物の本能を奪ってしまうことが果たしていいことなのかと、声高に賛成意見を言えなかったんです。でも、野良猫の殺処分問題を深く知ってからは、とても重要だとわかりました。でも実は、個人的感情で言えば、少し抵抗はあるんです。

石黒 おお、そのお気持ちもわかりますよ。大自然とか神とか見えない大きな存在に対する罪悪感みたいなものはちらり顔を覗かせはしますが。しかし野良猫という状況を考えれば、当然そうは言っていられませんよね。

本庄 そうなんです。日本人は世界の中でも特に、去勢避妊手術に抵抗感を示す方が多いように思うときもあります。それが日本人的なやさしさの現れであるとは思いますが。