EUでは狭くて脚に食い込みやすいニワトリのケージを法律で禁止!
石黒 もうひとつドイツの話しになりますが、この本を作り始めてから、日々の暮らしで思いが至ることになったのが、ニワトリの飼い方についてです。漠然とわかっていたつもりだったけど、あのように明確に示されると、考えるようになりますね。
本庄 同じアーヘンでも別の、家畜を保護してる私設シェルターのことですね。広い庭を走り回ってる光景は、アメリカのファームサンクチュアリ(連載3回目参照) https://diamond.jp/articles/-/129889?page=3 とも共通していますね。
石黒 譲渡対象ということなんですよね?
本庄 90羽が保護されていましたが、すべてがそうです。庭で飼えない人なら、2,3羽の里親になり、寄付をして、ここで世話を続けてもらうこともできるんです。そして週に5つ、卵を分けてもらえたりと。
石黒 多方向に有効な保護活動の進め方ですね! これも「離婚の養育費的なシステム」(連載4回目参照) https://diamond.jp/articles/-/130326 にも通じますね。あ、自分で預けるわけじゃないから、違うか(笑)
本庄 私がオーナーと話したときにいたニワトリは、卵を産むペースが落ちて、食肉処理所に連れていかれそうになっていたところを保護したそうです。
石黒 なるほど、そういうケースがあるんですね。卵といえば、本に出てきた「バタリーケージ」という言葉は初耳でした。
本庄 採卵鶏場で卵を産むニワトリをケージで飼うわけですが、A4サイズ程度のスペースしかない狭いケージなどがそう呼ばれています。しかも、脚が底のワイヤーに食い込むこともあるんです。
石黒 僕は狭さだけの問題かと思ってたんですが、網状になっていればそういうこともあるわけですね……。これもつまりは、動物の痛みや尊厳など考えずに動物を利用する、つまり、生産効率をあげるためのシステムという……。
本庄 動物福祉的な見地から、長年批判され続けていて、ついにEU各国では、2012年以降、その「バタリーケージ」の使用を禁止したんです。
石黒 行政指導なんていうぬるめの指示ではなく、法律ができるところが、びしっとしていますね。
本庄 はい、そして、ニワトリは止まり木で眠るので、ケージの中に棒を取り付けることも義務づけられたんです。
石黒 日本の状況はどんなんでしょう?
本庄 生産される卵の90パーセントが、この「バタリーケージ」だというデータがありますね。
石黒 ううむ。自分1人ではたったいまどうすることもできませんが、思いを寄せつつ、そんな話しを少しでも多くの人に伝えていくことで、動物福祉に対する日本人の「民度」の底上げにつなげていきたいです。動物全般に対する慈悲の心は、食べ物を頂いてることへの感謝と両立していますもんね。
本庄 そうですね。このシェルターで里親になっている方たちが、分けてもらった卵を食事で食べるとき、大切に食べるだろうなと思います。長い目で見れば、そういう思いを持つ人が増えていくことは、廃棄される食品を減らすことにもつながっていくと思います。
(続く)