東日本大震災から4ヵ月が経った今、一時巷に広まった雇用不安は薄れつつある。しかし、震災前から続く就職氷河期の影響もあり、「雇用被災」はこれから本格化することも考えられる。その影響を最も強く受ける可能性があるのは、すでに企業に勤めている社員よりも、実は新卒を中心とする若者たちだ。全国の雇用状況が改善の兆しを見せる一方で、ボディブローのようにじわじわと若者を脅かす「雇用被災」の実態を追った。(取材・文/プレスラボ・宮崎智之)
大震災後に回復の兆しを見せる労働市場
しかし「雇用被災」はこれからやって来る?
東日本大震災は、日本の企業社会に大きな影を落とした。発生直後は業務をストップして従業員に自宅待機を命じる企業が続出。その後本格化したサプライチェーンの混乱や計画停電によって、各社は生産・販売調整を余儀なくされた。そんな状況に追い討ちをかけたのが、福島原発事故の長期化により、消費者の間に自粛ムードや買い控えが広まったことだ。こうした未曾有の環境変化に晒され、一時的に売り上げや利益を大きく目減りさせる企業が続出したのである。
当然ながら、企業に勤める会社員の間には雇用不安が広まった。酒場で「夏のボーナスは出ないかもしれない」と愚痴をこぼす正社員や、「リーマンショック時のように契約を切られるのでは」と青ざめる非正社員の姿がたびたび報道されたことは、記憶に新しい。
だが、震災から4ヵ月が経った今、雇用不安も以前より薄れてきた感がある。その理由として、大企業を中心に計画停電への対応やサプライチェーンの建て直しが進み、事業継続への不安が薄れてきたこと、復興需要を柱とする年後半の景気回復を見据えて雇用調整に慎重な企業が多いことなどが考えられる。
多くの失業者を出した被災地企業や零細企業は別として、首都圏をはじめとする都市部の中堅・大企業において、大きく雇用不安が盛り上がっているというイメージはあまりない。その証拠に、5月の全国の完全失業者(速報値)は293万人と前年同月と比べて38万人減少し、完全失業率(季節調整値)は前月と比べて0.2%減少している。新規求人数に至っては58万4345人と、前年同月と比べて17.3%も増加した。
しかし、雇用不安は去ったのかと言えば、そうとも言い切れない。そもそも雇用に関する公の統計の多くは、景気の遅行指標だ。水面下に隠れていて足もとでは気づかなくても、震災の影響は、今後ボディブローのようにじわじわと我々の生活を脅かす可能性がある。