未訳の最新ビジネス洋書のエッセンスが詰まった書評レポートを、PDFファイルで閲覧・ダウンロード提供する本連載。今回取り上げるのは、『30秒以内で要点を伝える方法』です。(書評レポート提供/エグゼクティブブックサマリー

無価値な仕事を速やかに手放し、<br />価値ある仕事を見極める思考術 <br />『妥協の落とし穴<br />~自分の魂を売ることなく仕事で成功する方法』

どこかで決着を付ける合理性と
中途半端に終わらせる妥協の違いは

 ビジネスでも趣味でも何かを成すに当たって、世の中には2種類の人間がいます。要領を重視し「これくらいでよし」とする人。また、目的に強いこだわりを持ち、それ相応の追求を継続する人。前者の場合の「これくらいでいい」は、ある意味「妥協」という言葉で片付けられがちですが、本当の妥協とは一体何なのでしょうか?

 本書では、どのように人は妥協してしまうのか、という思考のプロセスをわかりやすく解説するとともに、「個人の妥協」が組織に与える脅威について、紹介しています。

 著者、エリザベス・ドーティは、組織の意欲や団結力を引きだすコーチング業務を中心としたコンサルティング会社WorkLoreを1993年に創設。以降、サンフランシスコを拠点に、個人レベルから企業レベルまで精力的にコンサルティング活動を行い、自分自身に忠実であることの大切さ、健全かつ強力な個人的基盤を持つことの重要性を、米国各地で説き続けています。

 本書の最も優れている点は、どのような企業においても実践可能なように、再現性を意識してまとめられている事にあります。

 再現性があるノウハウに仕上げるためには、多くの実例が必要とされますが、著者は独自のコンサルティングスタイルによって、多くの実例を集める事に成功しています。そのコンサルティングスタイルとは、クライアントに柔軟に対応できるように、目的に応じた部署や組織を配置し、その都度チームを編成して結果を生み出すというスタイルです。クライアントの要望に可能な限り沿うようにカスタマイズを徹底することで、企業業績にたゆまず貢献し続け、結果的に多くの実例を集めることができるようになるのです。

 また同社のコンサルタントのほとんどが、女性であるが故に、生まれる鋭い洞察力も特長です。この女性ならではの、きめ細やかな視点が炙り出す問題点が、見事なまでに学習プログラムへと変換される自己質問法は圧巻です。

 こうしたノウハウの一例を挙げるなら、質問スキルとアドバイスで、クライアントを望ましい結果へと導く3つの方法があります。

①仕事とは、他人の基準ではなく、自分自身が考える成功の定義に基づいて自分を評価すること。
②自分の仕事上の行動が自分の価値観とどの程度合致しているか。
③良い出来事を認識し幸運を数える習慣を持っているか。

 このような点にフォーカスし、仕事において真の成功と言える度合いを検証、測定する数々のステップが網羅された本書は、自分自身が「妥協している」と感じている人や、道徳的ジレンマ、ビジネスの倫理観に悩んでいる人、自尊心を持って仕事に取り組みたいとお考えの人に、自信を持っておすすめできる一冊です。

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