個人間の『紐帯(ネットワーク)』は、インターネットの発明によって、乗数的に加速してきた新しい層である。
インターネットは、ようやく20歳(ハタチ)の誕生日を迎えたにすぎないが、1991年8月6日に最初のウェブページが公開されてからわずか20年の間に膨大に増殖し、現在では196億8000万のウェブページが存在する。すでに世界の記録情報の90%以上を飲み込んだウェブは、今、人々の経歴や個人間の関係といった有機的な情報を蓄え始めた。
ソーシャルネットワークは、個人間の紐帯を明らかにし、強固にし、組織化し続ける。早晩、ウェブは我々の「履歴書」となり、個人の「クレディット(信用)」の源泉となるだろう。
いつかはFacebookやTwitterといった個々のサービス自体は弱体化し衰退するだろう。だが、紐帯を強化する流れはとどまることはない。やがてウェブ上のコミュニティはそこに必要な機能(憲法・教育・医療・福祉・市場・法律など)を自ら造り始めるだろう。それは、今の国家が保有しているものである。
三層の対等化に
気づかない「国家」
最初の疑問に話を戻そう。
まず、堀江さんの「尖閣あげちゃえば?」発言について。
僕が思うに、彼は『国家』という枠組みがもはや絶対ではないことを直観しているのだろう。
つまり、第一の層である『国家』よりも第二、第三の層である企業や個人間の紐帯(ネットワーク)の方が威力を増しており、人々の関心や生活の中心がそちらにシフトしてきていることを鋭く察知しているのだ。だから彼にとって常に、国という土台で考え、日本のために、という前提で話をする論壇の重鎮達とは議論の歯車がまったく合わないのである。