三層のなかでは、「企業」に続き
「個人間ネットワーク」が台頭
三つの層とは何か?
まず第一層として、地政学的に切り分けられた『国家(ソブリン)』、その上に第二層として、国境を超えて地上をまるで雲のように漂う『企業(グローバル・カンパニー)』、最後に第三層として、さらにその上にオゾン層のように点在し結びつきあう『個人間の紐帯(ネットワーク)』がある(図1)。
今、起きていることは、これまでぼんやりと分かれていたもののそれほど意識されてこなかった、この『国家』『企業』『個人間の紐帯』という三つの層がくっきりと分かれ、それぞれが対等の立場を持ち始めている、ということである。
~国家のGDPと企業売上高(オレンジ)を多い順に並べたランキング~
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『国家(ソブリン)』について、言うべきことはそれほどない。
国家とは知っての通り、地政学的に分割され、政府によって統治されている地域コミュニティのことだ。人々は、身体的な移動コストを理由に何千年もこの国家というコミュニティに依存して生きてきたし、今もそうだ。国家は、政治的には巨大だが、その債務をみれば明らかなように、先進国も途上国も、経済的には瀕死の状態にある。
『企業(グローバルカンパニー)』の存在感は、人々の想像以上に大きくなっている。GE(ゼネラル・エレクトロニック社)には病院から学校までなんでもそろっているし、アップルがアメリカ政府より多くの現預金を保有していることはよく知られている。
世界のGDPをみれば、第1位はアメリカ、第2位に中国、第3位日本と誰でも知っている先進国が続くものの、25位のウォルマートを皮切りに、29位にロイヤルダッチシェル、41位にトヨタ自動車など、徐々に『企業(グローバルカンパニー)』が登場し始める。なんと2010年の世界のGDP(企業の場合、売上高)のトップ100のうち、4割以上を『企業(グローバル・カンパニー)』が占める(図2。オックスフォード大学で企業の世界分業を研究している琴坂将広氏に依頼して作成した資料による。GDPも売上も名目を用いている)。