――装丁は、多田和博さんですね。迫力のあるバックの絵柄ですね。

佐藤 多田さんには、「黄土」を連想させるものがいいのではないでしょうかとお願いしました。多田さんはゲラを読んでくださり、「とても楽しく読めました」と仰っていただきました。文芸書を多数手がけておられるデザイナーに、そう言ってもらえたのはとても嬉しかったです。

 このカバーの写真は、地域は黄土高原とは違うけれどもイメージが合っているのでは、とご提案いただきました。どうも棚田のようです。色も夕陽でこういう色になっているんじゃないかと思います。

――火山かと思いました。

佐藤 画像のイメージとしてはぴったりでした。グラデーションになっているのは霧だと思うんですが、砂煙のようにも見えます。実は何案かあって、その中には本当の黄土高原の写真を使ったものもあったのですが、ちょっとリアル過ぎてドキュメンタリーならいいけど小説のイメージには合わないかな、と。
そこで深井さんにその旨お伝えして、多田さんからいただいた四案ほどをお送りしました。深井さんはメールで装丁案を受け取ったとき、ちょうど中国にいらっしゃったとのことで、周囲の中国人10人くらいと日本人5~6人に見てもらったそうです。

 すると、この棚田らしき写真を使ったものが圧倒的な一番人気で、「これは黄土高原の写真ではない」といった異論はなかったということでした。中国人の人が見ても違和感がないと言ってもらえたので、これで行こうと自信をもって決めることができました。