世界的なリスク回避の中で、「安全資産」として選好されてきた金(ゴールド)、債券、スイスフランが反落してきました。
これが「安全資産」である円の下落を示唆するものなのか、今回は考えてみます。
日米の2年債利回り差縮小で、ドル/円は下落した
米ドルは8月に入ってから、3月の大震災後に記録した76円台の歴史的安値を更新し、一時は75円台をつけました。3月の協調介入以来となる円売り介入が、今回は日本単独だったとはいえ、8月4日(木)に行われたにもかかわらずの最安値更新です。
このように、米ドル安・円高が一段と進んだ主な要因は、米国の金利が低下したことです。
資料1
「資料1」は、中期金利である日米の2年債利回りの差と米ドル/円のグラフを重ねたものです。日銀の白川総裁が、相関性が高いことを再確認したと発言したことで、一部で話題になりました。
もともと、市場関係者の間では、米ドル/円と米国の金利の相関性が高いことはよく知られています。ただ、金融当局の首脳が改めて言及したことには、ちょっとした意外感がありました。
それはともかく、この資料を見ると、日米の2年債利回り差が一段と縮小し、それと連動する形で米ドル安・円高が広がったことが確認できます。
この8月は「100年に二度目の危機」に追い込まれた
それでは、なぜ、米国の金利はこのように一段と低下したのでしょうか?
これは、何か1つの理由によるものではなく、8月に入ってからさまざまな不安が連鎖し、「悪いところ取り」のようなムードが一気に急拡大したためでしょう。
米国景気の減速懸念が一段と広がり、一部ではリセッション(景気後退)転落懸念まで浮上し、米国株を含めて世界の株価が急落しました。
「資料2」は、「恐怖指数」と呼ばれる「VIX指数」です。
これを見ると、最近にかけての金融市場の「恐怖感」は、昨年夏のユーロ危機を主役に展開したそれを上回り、2008年から2009年にかけての「100年に一度の危機」と呼ばれた局面に迫りかねない状況になっています。
言うならば、「100年に二度目の危機」となりかねない状況です。
資料2
こういった中で、世界的にリスクを回避し、安全資産へ資金をシフトする動きが広がりました。その安全資産の代表格が米国債です。
米国債は、8月初めに有力格付け会社の1つが史上初めて格下げに踏み切ったのですが、それで売られるどころか、安全資産への資金シフトで逆に一段と買いが殺到し、その中で利回りが一段と低下したのです。
「100年に一度の危機」はどのような状況下で始まったか?
さて、ここまで「100年に二度目の危機」といった様相が一気に広がった8月を振り返ってみましたが、状況は本当にそれほどひどいのでしょうか?
慌てるあまり、悲観的になり過ぎている可能性はないでしょうか?