千代田区内で唯一、3次救急に対応する災害拠点病院となっている駿河台日大病院

 国会や官庁のお膝元である東京都千代田区に動揺が広がっている。東日本大震災が発生したにもかかわらず、重篤な患者に対応する災害拠点病院が区内からなくなってしまうことが判明したからだ。

 この病院は、心肺停止など集中治療室での治療を要するような重篤な患者に、高度な医療を提供する3次救急施設として活動してきた駿河台日本大学病院(救命救急センター)。3次救急に対応する東京都災害拠点病院としては区内で唯一の受け皿となってきた。

 それが、2014年に近隣に新病院を建設、移転するのに伴って、3次救急から撤退する方針を固めた模様なのだ。

 日本大学本部は、「現段階は病院機能を検討中のため、コメントは差し控えます」とする。しかし今年7月、地元の町内会や大学、企業の代表者ら約30人を集めて開いた「神田駿河台まちづくり協議会」の席上で日大は、「(入院・手術に対応する)2次救急の病院となる。3次救急だと施設基準などが厳しい」と、すでに撤退の理由まで明らかにしている。

 これに対し地元は猛反発。今後も話し合いは続くが、「いずれ千代田区は東京都に、地元医師会は都医師会に対して存続に向けた要望書を出す予定」(関係者)。

 新病院の開設に当たっては、都の許可が欠かせないだけに、ある病院関係者は「都の審議が紛糾するのは必至」と見通す。

 日本の中枢機能を担っている千代田区から、大災害など緊急時の“最後の砦”が姿を消しかねない事態。関係者は、事の行方を固唾をのんで見守っている。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 内村 敬)

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