安易な宥和政策は
北朝鮮の暴走を招く

 では、このような戦争学の立場にのっとって、今回の北朝鮮のミサイル外交を検証したらどうなっていくのか、ということに非常に興味がある。

 北朝鮮の「挑発」に対して、アメリカがいわゆる「宥和政策」を打ち出して、世界中がホッと胸をなでおろしているが、これが中長期的に見ると「平和」につながる選択なのか不透明だからだ。

 ナチスがチェコスロバキアに進出した際、平和主義者として知られるイギリスのネヴィル・チェンバレン首相が、ナチスと衝突するのではなく、彼らの要求に応える「宥和政策」を打ち出した。時のメディアはチェンバレンを英雄だとほめちぎったが、ダムが決壊するようにナチスの要求はさらにエスカレートしてポーランド侵略を招いた。

「宥和政策」を打ち出した側は「平和」を守れたと満足しても、「平和の敵」を倒すべし、と牙を磨いている者からすれば、単なる戦争の準備期間に過ぎない。これこそが、チェンバレンの後に首相になったチャーチルが、その回顧録で第二次大戦を回避することが容易だった「無益な戦争」だと述べた理由だ。

 もちろん、誤解なきように断っておくが、手遅れになる前に金正恩体制を潰しておけ、などと言っているわけではない。ただ、相手は「反戦平和の闘争」を掲げている人たちである以上、安易な「宥和政策」は裏目に出るということを申し上げたいのだ。

「安倍を倒せ!」と喉を枯らしている人たちが、損得や打算で集まっていないように、北朝鮮も損得だけで動いているわけではない。自ら「取引の天才」だと吹聴するトランプとはまったく異なる思想の持ち主なのだ。

 平和を望むなら、戦争を理解せよ――。水と油ともいうべき北朝鮮とアメリカの駆け引きからは、これからの世界で「無益な戦争」を避けるヒントを見つけられるかもしれない。