森氏の3年目は引き続き
地域金融機関への対応を重視

 金融行政の行方が注目される中、森長官が3年目を続投するかどうかは、今夏の金融界や霞が関の一大関心事になっていた。通例、省庁トップの人事は、後任候補の年次にもよるが、おおむね在任期間は1年から2年というのが“相場”である。実際、森氏自身は当初、3年目の続投を固辞していたが、霞が関を掌握する菅義偉・官房長官の信任の厚い森氏が、首相官邸からの説得もあって最終的には受け入れたとされる。

 森氏が留任となったことで、金融庁の幹部クラスの大幅な入れ替えはなかった。焦点となっている地域金融機関関連では、ノンキャリアとして初の監督局審議官になった西田直樹氏が引き続き務める。銀行2課長を長く経験して、西田氏ほど地域金融機関に精通している人はいないとされるからだ。元広島銀行幹部など民間出身者も幹部職に就いており、さらに金融庁はこのほど、信用金庫や信用組合の経営状況に詳しい人材を迎え入れた。

 こうした面からも、森氏の3年目は引き続き地域金融機関向けの政策を重視すると見られ、それに対応する陣容を整えたといえる。

 7月に開かれた全国の地方銀行首脳との意見交換会で、森氏は地銀の「稼ぐ力」に強い危機感をにじませ、持続可能な経営モデルの構築を求めた。金融行政は「平時」だが、こと地銀の将来について決して楽観はできないという含意である。

 このように金融庁は「もっとトップが危機感をもって取り組んでほしい」と様々な形でメッセージを送っているが、地域金融機関の経営者の中には「自分がトップにいる間はしのげればいい」などと考える向きも多く、金融庁の思うようには動かないのが実情だ。

 森氏の金融行政を象徴するキーワードに「フィデューシャリー・デューティー(Fiduciary duty)」(FD)がある。直訳すれば「受託者責任」ともいうべき言葉だが、金融庁はこの2年間、資産運用における顧客本位の業務運営を実践するよう金融機関に求めてきた。