金融庁自身の組織改革など
仕上げの一年は課題山積

 国民の安定的な資産形成に向けて、「顧客本位の業務運営に関する原則」を採択し、取り組み方針を公表した金融事業者は400社以上に及ぶ。しかしその内容はまちまちで、金融庁が期待する水準に達していない金融機関も多い。金融庁は「投資信託販売額に占める自社グループ商品の割合」なども踏み込んで公表したケースを「好事例」として推奨している。

 しかし、ルールにのっとった行政上の要請ではないため、各金融機関は「様子見」の状態を続けているのが実情だ。今後金融庁は、金融機関にいかにFDの内容を充実してもらうかが課題となる。

 ただ、金融機関が顧客本位になったからといって、すぐに投資が活発になるというわけでないことは金融庁も十分理解している。国民が実際に投資を積極的に行うようになるには、まだまだ時間がかかると見られるからだ。日本経済の長年の宿願といえる「貯蓄から投資へ」という金融構造の変化を、今後どう実現していくかも問われるだろう。

 さらにもう一つの課題は金融庁自身の組織改革である。8月下旬には、検査局と監督局を一体化することが発表される見通しだ。金融庁にとっては大きな組織再編だが、現状では誰が指揮をとるのかわかりにくく、森長官の認めた一部の優れた人材が様々な役職を兼任している弊害も指摘されている。このため高度に複雑化する金融業界の動きに機敏に対応するため、専門知識を持つ外部人材の積極的な登用を行うほか、メガバンクの元幹部らを金融庁参与として受け入れ、助言を求めている。

 森長官が3年目を迎えても、このように課題は山積している。今後は、森氏の目指す目標に、金融機関がどれほど敏感に反応するかが焦点となる。金融庁自身も、地域金融機関との窓口になる地方財務局への優秀な人材の配置など、組織全体として機動的に対応できるかどうかが試される。これら課題を森長官がどれだけ着実にこなすことができるのか。仕上げの一年の動きに対して一段の注目が集まりそうだ。