イトーヨーカ堂は9月、20~40代向けのカジュアル衣料などのプライベートブランド「グッデイ」の衣料品を発売し、同社初のSPA(製造小売り)に乗り出した。
SPAとは、商品企画、製造、販売までを自前で行う方式のこと。ユニクロはその代表だ。従来の製品に比べると、需要に応じた追加生産が迅速に行えるだけでなく、売れ残りリスクが減ることもあり、「原価は15~16%下がる」(戸井和久取締役)という。
グッデイの売上高は初年度で350億円を計画しており、この1ブランドだけでイトーヨーカ堂の衣料品売上のじつに1~2割を占めることになる。その結果「今年度は確実に黒字化する」(亀井淳社長)見込みだ。
GMSにとって、主力商品である衣料品は、長らく重荷であった。
ユニクロなどの専門店が成長する中、GMSの衣料品事業は長期低迷し、今は1992年のピーク時に比べて約3分の1にまで落ち込んでいる。
従来、GMSの衣料品事業は、問屋から提示された商品を売るだけの、いわゆる「問屋マーチャンタイジング」に依存してきた。売れなければ何度も値下げを行い、最後は赤字でも売りさばいてきた。
この反省に立ち、グッデイでは、予想需要の約7割を先行発注するが、残り3割は期間中に追加生産ができる体制を構築。正価で売ることで建値消化率を引き上げ「粗利率は5%程度改善する」(同)という。
しかし、計画通りにいくかどうかは未知数だ。
ライバルであるイオンでも、すでに昨年9月に初のSPAである「トップバリュコレクション」を発売しているが、「かなりの苦戦を強いられている」(業界関係者)と見られている。
その最大の理由は、「GMSでは肌着のような必需品は売れるが、本当に欲しい“必欲品”を生み出すセンスはない」(同)ことに尽きるのではないか。
また、今回、新たな取り組みとして、売り場自体をネットに掲載し、その画像をクリックすることで、カラーコーディネートを可能にするなど、ネット販売にも注力する。「衣料品において、リアルとネットの融合の第一歩が始まったことを実感している」(亀井社長)として、いずれはネットによる売上高比率を最低でも2割に引き上げたい考えだ。
だが、これとても、「鈴木敏文会長の息子である鈴木康弘氏が率いるセブンネットショッピングの底上げをしたいのではないか」(業界関係者)と冷ややかに見る向きもある。
いずれにせよ、イトーヨーカ堂にとって、GMSの衣料品事業のテコ入れ喫緊の課題である。
「GMSは衣食住の総合性が強み。それゆえ、衣料品をやめることは考えていない」(亀井社長)という。だが、SPA事業の結果いかんでは、衣料品事業の必要性すら問われることになりそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)