難癖つけて反対派を駆逐
「溜まっていくタブー」で居心地が悪化

 とはいえ、長期政権ではいろいろなきしみや歪みが出て来ることも確かだ。何よりも恐ろしいのは「溜まっていくタブー」である。

 何のことかわからないかもしれない。順を追って説明しよう。
 
 新社長が就任するとき、社長以外の重役が全員一新されることはまれだ。ごくまれにマネジメントチームごと刷新できる場合もあるが、通例、社長の周囲は前任の社長を支えた経営陣のままであることが多い。新社長の反対派が数多く混じっていることも珍しくはないだろう。

 新社長は自分の経営方針に基づいて会社の舵取りを始めるに当たり、いきなり反対派を一掃するような暴挙には出られないので、一枚一枚まるで玉ねぎの皮を剥ぐように、反対派を「外して」いかねばならない。仮に社長支持者と反対派が6:4の割合だったとしても、社長支持者が半分に割れて反対派につけば、3:7で形勢はいともたやすく逆転するのだ。

 反対派の追放には、適当な口実が必要だ。逆にいえば口実はなんだっていい。

 ある会社では新社長の就任直後に本社の建て替えが完了し、エントランスホールが全面大理石を敷き詰めた床にリフォームされた。ところが、その大理石が鏡面のように反射し、女性社員や女性の訪問客のスカートの中が映ると騒動になり、苦情が寄せられた。そして、その咎で取締役総務部長が引責辞任に追い込まれたのである。総務部長はかねてから新社長の目の敵にされていた人物だった。

 これは珍事の類だが、たとえば、関連会社の不正会計処理など、小さくても何らかの不始末や不祥事が発覚すると、遠因は役員の○○氏にある、ということになり、経営幹部が一人、また一人と更迭され、左遷されていく。

 不祥事の発覚どころか、大して不利とも思えないニュース記事が出たことに対してメディア対応の不行き届きが咎められる、異常気象への対処が後手に回ったことによる売り上げの一時的な減少で責められる、社長が知る必要があるとも思えない事項の報告がなかったことが問題になる、不可抗力によるちょっとした事故が指弾される、……ほんの些細なことでも、反対派粛清の格好のチャンスといった様相を呈してくる。