歩かない、座りっぱなしの習慣は近年、「肥満」という健康リスクを誘発するとして、世界的に問題視されている。

 歩行に関する基礎データを集めるべく、米スタンフォード大学の研究チームが、スマートフォンのアプリケーションを介して世界111カ国、約72万人分という膨大なデータを収集。合計6800万日分、平均95日間の歩行を調査し、さらに、46の国と地域のデータを詳細に分析した。

 その結果、世界の人々──スマホを持てる生活水準の人の1日の平均歩数は4961歩、と判明。歩数が最も多かったのは香港で、6880歩、最も少なかったのはインドネシアの3513歩だった。

 一方、日本は6010歩と、中国6189歩、ウクライナ6107歩に次ぐ第4位だった。この四つの国・地域において「体格指数30以上」の肥満率は、香港5.6%、中国3.7%、ウクライナ8.6%、日本は5.5%だった。

 逆に肥満率から歩数をみると、肥満大国である米国の肥満率は27.7%(3人に1人!)、1日の平均歩数は4774歩だった。米国のお隣のメキシコは、4692歩と歩数の差はそれほどないが、肥満率は18.1%にとどまった。

 研究者は「平均歩数そのものより“よく活動する人”と“活動しない人”との間にある“活動格差”がその国や地域の肥満率に大きく影響する」と指摘している。活動格差が大きいほど、肥満が増える──、平たくいえば、「活動貧困者」が各国の肥満率を押し上げているわけだ。

 実際、米国とメキシコでは米国の活動格差の方が大きい。また、前述したインドネシアも活動格差は米国より小さく、平均歩数が最も少ないにもかかわらず、肥満率は11.2%だった。自家用車や簡単・便利の普及度の違いが背景にあるのだろう。活動格差が大きい国では、特に女性の活動量がどっと減る傾向がみてとれる。

 幸い、日本は活動格差、肥満率ともに低く、まずまず健康的な国らしい。男女とも勤勉に歩き回り働く姿は時に奇異に映るようだが、活動格差が健康格差=肥満として表出するよりマシかもしれない。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)