パナ発のロボットベンチャー
軽作業から重作業まで事業化

 アトウンは、パナソニックのベンチャー制度で03年に設立された会社。藤本自身が制度に応募し、パナソニックから1億8000万円の出資を受け、当初は「アクティブリンク」の社名で創業した。

 もともと松下電器産業(現パナソニック)のモーター事業部にいた藤本にロボット開発の経験はなかった。しかし、「モーターの力で人間の動きを支援する装着型ロボット」のアイデアを温め続け、01年に制度に応募。このアイデアが審査にパスしたことで、翌02年からベンチャー事業の推進部門に異動し、1年にわたって調査を繰り返し、事業化に向けてビジネスモデルを練り上げた。

「当時は昼も夜もなく事業のことで頭がいっぱいで、すでにサラリーマンの生活ではなかった」。そう振り返る藤本が考え出した装着型ロボットのビジネスが、(1)人の力を超える重作業用スーツ、(2)人の力を助ける軽作業用スーツ──の二つの分野の展開だ。

 この2本柱は今に続く事業戦略で、実際の事業は、(2)の軽作業用のパワーアシストスーツが先行している。15年に、倉庫や物流の現場で荷物を持ち上げる負担を軽くする軽作業用スーツ「モデルA」を量産化し、今年8月までに累計240台を出荷した。今のところ着るというより背負い込む機械だが、現行モデルの重量7キログラムを、今秋発売のモデルで6キログラムまで減らし、さらに普及を目指す。

 軽作業用スーツには、介護現場で高齢者を抱きかかえる作業といった需要も想定される。しかし「こんなものを着ている暇があれば2人で抱き上げた方が早い」との声を聞いて一時断念。だが藤本にとってはこれも顧客の声だ。「いずれ服のように自然に着たままでいられるアシストスーツを開発する」という野心を燃やしている。

 軽作業用スーツの事業を軌道に乗せつつ、いよいよ重作業用スーツの事業を本格的に立ち上げた今年の4月、「あうんの呼吸」にちなんで、社名を「アトウン」に変更した。

 ロボット開発で目指しているのは、「年齢や性別に左右されずに働けるパワーバリアレス社会の実現」だ。藤本の事業家としての経営理念でもある。(敬称略)

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 村井令二)

【開発メモ】装着型ロボット
 重作業用の装着型ロボット「NIO」(写真中央)はプロトタイプで、その腕の技術を応用して製品化したのが「配筋アシストロボット」(写真左)だ。事業として先行する軽作業用のパワーアシストスーツ「モデルA」(写真右)は、ヒトが荷物を運ぶ負担を軽減する装着型ロボットで、競合企業のサイバーダインなどと共に新市場を形成しつつある。