ホンダセンシングとは、単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせて車の前後方の情報を認識し、車両や歩行者を検知してブレーキをかけたり、ステアリング制御で先行車に追従したりできるホンダの独自技術だ。

 競合車では、ダイハツ工業「タント」やスズキ「スペーシア」も衝突軽減ブレーキなどを搭載しているが、いずれも標準装備ではない。軽自動車のユーザーは価格にシビアな傾向があり、「安全装備なしの低価格グレードも用意し、お客さまに選んでもらう」(ダイハツ)ことが軽自動車販売の“常識”とされてきたからだ。

 実際、タントの最低価格が122万0400円(税込み、以下同)、スペーシアが127万4400円なのに対し、新型エヌボックスは138万5640円と高めだ。だがホンダは「価格が高くても安全性能など高付加価値を求めるユーザーは多い」と判断。従来モデルで弱かった安全装備を一気に拡充し、差別化を図る構えだ。

 軽自動車メーカーはこれまで低価格や低燃費を競ってきたが、上級車並みの安全システムの標準装備が軽でも「当たり前」(ホンダ)となれば、各社の販売戦略が大きく変わる可能性がある。

 ただホンダは表立ってPRはしないものの、カタログの片隅には「ホンダセンシングを装備していない仕様も用意しております」との一文も。購入者が安全装備を外すよう強く求めた際の対応だそうだが、システム普及の過渡期における苦肉の“裏オプション”といえそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史)