東北地域では、40万台以上の四輪車が津波で流されたともされており、二輪車へ替えた被災者も多い。全国的にも、消費者の節約志向は高まっており、経済性の高い手段として、二輪車が再評価されている
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 久方ぶりに、国内二輪車市場に追い風が吹いている。「被災地で飛ぶように二輪車が売れている。在庫が品薄の販売店も多く、機会ロスを起こしている状況」(ホンダ関係者)という。

 東日本大震災の発生から半年が経過し、被災地の交通インフラが着実に復旧するにつれて、二輪車市場に“特需”が舞い込んでいる。

 二輪車のなかでも販売好調なのが、原動機付き自転車(原付)だ。ちなみに、道路交通法・道路運送車両法の定めにより、二輪車は排気量別に、原付第1種(排気量50cc以下)、原付第2種(同51cc以上)、軽二輪車(同126cc以上)、小型二輪車(同251cc以上)と4分類されている。

 実際に、東北6県(青森、秋田、岩手、山形、宮城、福島)における今年4~6月期の出荷台数では、原付第1種は前年同期比98%増の4773台、原付第2種は同106%増の976台となり、双方共に倍増している(数字は9月21日開示予定の自動車工業会速報、大手メーカー4社合計)。6県の中では、岩手県、宮城県の伸びが突出している。

 販売好調の主たる理由は二つある。第1に、道幅が確保された道路ならば隙間を縫って走行できる「機動性」である。第2に、四輪車に勝る「経済性」である。原付第1種ならば10万円台前半から購入できるし、低燃費でランニングコストも低い。津波被害により、東北地域では40万台以上の四輪車が流されたとされており、経済的な事情から「生活の足」を四輪車から二輪車へ替えた被災者も多い。当分のあいだ、被災地における“特需”は続くと見られている。

 もっとも、業界関係者では冷静な向きも見られる。「阪神・淡路大震災発生時ほどに爆発的に売れているわけではない」(ヤマハ発動機)、「国内市場に占める被災地の販売構成比は数パーセント。部分的な特需が国内市場活性化へ直結するとは限らない」(スズキ)といった具合だ。

 それほどまでに、近年の国内二輪車市場は長期低落傾向に陥っていた。2010年の二輪車の販売台数(国内末端販売店向け出荷台数)は、5年連続減少の約38万台。若年層による二輪車離れに加えて、たび重なる排ガス規制の厳格化が直接的な引き金となり、10年前と比べると販売台数は半減した。

 一方で、震災が呼び水となり「6年ぶりに国内市場が“底打ち”となる期待もある」(二輪車メーカー幹部)という楽観的な見方も出ている。今年1~8月期の販売台数で見ると、二輪車市場(全国)は6.5%増と拡大傾向にあり、年間では6年ぶりのプラス着地が現実味を帯びてきた。被災地のみならず、全国で二輪車市場が底を打っているのは、「不況の長期化により、消費者の節約志向が高まっている」(二輪車メーカー幹部)からだ。数ある移動手段のなかで、経済性の高い二輪車が再評価されている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)

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