出版業界の縮小に悲鳴を上げる業界関係者が多い中、一部で話題なのが「独立系版元」。10万部、100万部のベストセラーを狙うのではなく、数千部から1万部ほどの部数を確実に売っていく、リトルビジネスとしての出版業態だ。8月には、自分で版元を起ち上げた4人の女性たちが登壇するトークイベントも開催された。なぜ今、「独立系版元」なのか。イベントの様子を取材した。(取材・文/むらたえりか、編集協力/プレスラボ)

回復しない出版不況
なぜ今「独立系版元」なのか

女性たちが「1人出版社」を起業した理由イベント登壇者の皆さんが自社から出版した書籍

 出版不況と言われて久しい。出版取次大手の日本出版販売(日販)が2017年5月に発表したところによると、同年3月期の売上高は前年比2.4%減の6244億円。4年連続で減少したことになる。読者離れ、配送効率の悪化と、出版業界の課題は尽きない。

 その一方、近年「独立系出版版元」が出版業界内外から注目されている。独立系出版版元は「インディーズ出版社」などとも呼ばれる小規模な出版社のこと。知名度の高い独立系出版版元としては夏葉社やミシマ社などがよく挙げられる。大手出版社とは一線を画し、トレンドに流されず、版元や編集者が心から面白いと思える本、世の中に必要だと思える本を出版できることが魅力の1つだ。

 独立系出版版元の中には、女性が立ち上げた版元も少なくない。2017年8月23日、東京都台東区の書店「Readin'Writin'(リーディンライティン)」で、独立系女性版元の代表だけを集めたトークイベント「独立系女性版元のはたらきかた」が行われた。主催は、出版関連プロジェクト運営会社「よはく舎」代表の小林えみさん。

 小林さんは、堀之内出版という版元で思想雑誌『nyx(ニュクス)』や労働問題を扱う雑誌『POSSE』の他、一般書籍を刊行している。今回イベントを開催したのは、自身が編集者として働く中で疑問を感じることがあったからだという。