三つの出来事とはすなわち、(1)16年4月に元AZがん領域グローバル開発ヘッドのアントワン・イヴェル氏が、がん研究開発部門のトップに就任。(2)16年10月に第一三共が次代の主力製品と位置づける抗体薬物複合体「DS-8201」の良好な新薬開発試験(第1相)結果を欧州臨床腫瘍学会で発表。

 ここまではオープンな情報だが、一部社員だけが知る“決定打”が、この幹部によると、(3)16年秋に「敵対的買収対策を強化した」ことだった。社内の対策本部に、指折りのメンバーが招集されたという。

 第一三共はそれまで、主力製品の高血圧症治療薬、オルメサルタンの特許切れを迎えて沈んでいた。その中で光り始めた「DS-8201」という新薬候補は第一三共の期待の星。学会発表前に俄然社内の雰囲気は盛り上がった。そのため、「買収対策は超大型製品になる可能性を秘めた『DS-8201を守るため』と思っていた。具体的な買収提案までは想像していなかった」とこの幹部は驚く。

 (1)~(3)で推測されるところは、アントワン氏が世界では小粒の第一三共に移籍し((1))、移籍前後からAZも第一三共に関心→DS-8201の期待値が判明((2))ただしAZは発表前から既に注目していた可能性も→(1)(2)の過程のどこかでAZが買収提案したが第一三共首脳は断り、逆に防衛策を強化した((3))――。だとすれば話は一本につながる。以上がある幹部の解説だ。