群馬大学病院で起きた腹腔鏡手術死亡事故の恐るべき闇群馬大学病院で腹腔鏡の手術を受けた患者の連続死亡事故はなぜ起きたのか(写真はイメージです)

病院の安全管理を強化する医療法が改正、
発端は読売のスクープ記事!

 森友学園と加計学園をめぐる問題に揺れた今年の通常国会で、ある重要法案が可決・成立したことはあまり知られていない。特定機能病院の安全管理を強化する改正医療法である。大学病院のような高度医療を担う病院は、医療安全対策も高水準でなければならないという方針が、法律として明文化されたのだ。

 改正のきっかけとなったのは、読売新聞のスクープ記事だった。

 <腹腔鏡手術後8人死亡 高難度の肝切除 同一医師が執刀 群馬大病院>

 2014年11月14日最終版一面の見出しは衝撃的だった。

群馬大学病院で起きた腹腔鏡手術死亡事故の恐るべき闇『大学病院の奈落』
高梨ゆき子、講談社、282ページ、1600円(税別)

 北関東屈指の医療拠点として知られる群馬大学病院で、2011年から2014年に腹腔鏡を使った高難度の肝臓手術を受けた患者100人のうち、少なくとも8人が死亡していることが判明したというのだ。記事は、8人を執刀したのはいずれも第二外科の同じ医師で、これらの手術は事前に病院の倫理審査を受ける必要があったにもかかわらず、申請されていなかったことも伝えていた。

 読売新聞は四半世紀にわたって「医療ルネサンス」を連載するなど医療関連記事では定評がある。まさに「医療の読売」ならではの渾身のスクープであった。

 当時、朝の情報番組を担当していたため、この記事を目にした時の衝撃をよく覚えている。あわてて医療関係者に連絡をとりながら頭をよぎったのは、「8人もの患者が亡くなっているということは、医師による意図的な行為だったのか?」という疑問だった。