シンギュラリティの時代に誕生すると孫が予言するのは、大量のデータを自ら集めて学習・分析し、思考する「超知性」だ。

 超知性の実現を可能にするキーワードとして孫が挙げるのが、「AI」「ロボット」「IoT」である。その言葉通り、孫社長は今、この三つの領域への投資を加速させている。

 AIの分野では、冒頭で紹介した新会社設立が間近に迫っていることに加え、AIの学習向け半導体で“1強”の地位を築きつつある米エヌビディアに約4000億円を突っ込んだ。

 ロボットでも今年6月に米ロボットベンチャー、ボストン・ダイナミクスと東京大学発ベンチャー、シャフトの2社をグーグルから買収し、投資を加速させている。

 そして、孫社長が三つのキーワードの中で最も重要だと位置付けるのがIoTであり、そのための布石が昨年9月に3.3兆円で買収した英半導体大手アームである。

 超知性の“思考力”の源泉となる膨大な量のデータを集めてくるためには、末端のセンサー一つひとつにデータを収集・送信するための半導体が欠かせない。

「今から20年以内に、アームは1兆個の半導体を地球上のありとあらゆるものにばらまく」

 こう豪語する孫社長は、あらゆるモノに半導体が搭載される時代が到来した暁には、交通や医療、農業など、従来は情報通信とは縁遠かった産業でも情報革命が起きていくと確信しており、ここにもいち早く投資の手を伸ばしている。

 テックコングロマリット(巨大企業集団)。海外ではソフトバンクのことをそう称する。通信会社としての成長期にあった時代のソフトバンクには、ドコモや日本電信電話(NTT)という、目標にできる格好のお手本があった。だが、いまや孫社長が志向するテックコングロマリットのお手本は世界のどこにも存在しない。ソフトバンクは孫社長も知り得ない未踏の領域に踏み出したのだ。