世界と日本で
分裂する二つのソフトバンク

 2部制で催された社員大会は、分裂する二つのソフトバンクを象徴するかのようだった。

 6月27日、東京駅近くの東京国際フォーラムで開催されたソフトバンクグループの社員大会。第1部では、持ち株会社ソフトバンクグループの孫正義社長と外国人取締役3人が登壇。急拡大する海外事業についてのプレゼンを済ませると、4人はそのまま会場を後にした。

 続く第2部では、持ち株会社傘下の通信事業会社ソフトバンクの日本人取締役から技術部門1.4万人の半減が打ち出された。

 孫社長は今、来るべきIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、そしてロボティクスの時代に備えて海外事業に心血を注ぎ、国内事業への関心が極端に薄れているといわれている。

 海外シフトを主導するのは、取締役の過半数が外国人に刷新された持ち株会社だ。

 昨年には日本企業による海外M&Aとして史上最高額の3.3兆円で英半導体設計大手のアームを買収。さらに今年、サウジアラビアと共同で10兆円ファンドを立ち上げて海外投資をさらに加速させている。その先に孫社長が目指すのは、世紀を超えて続く「300年帝国」の建国という野望だ。

ソフトバンクの取締役会は全欠席
内部から聞こえてくる矛盾と不満

 急激な海外シフトの裏で、孫社長はグループの営業利益1兆円のうち7割を稼ぎ出すソフトバンクの経営会議には全く出席しなくなった。世界への飛躍に傾倒し、国内事業軽視にも映る孫社長の動きに戸惑う国内社員との距離は開くばかりだ。

 ソフトバンクの中堅幹部は「このままじゃ、ソフトバンクは日本と世界で分裂する」と危惧している。

 日本国内ではまだ携帯電話大手や通信大手と評されることの多いソフトバンクだが、海外ではすでにテックコングロマリットと呼ばれている。

 ソフトバンクはまさにその過渡期にあり、孫社長が知らないところで矛盾や不満が表面化してきた。それをことさら批判するつもりはない。それこそが組織を飛躍させるために必要な当然の「痛み」だからだ。最強の「テック財閥」へ脱皮しようとするソフトバンクで何が起こっているのか。『週刊ダイヤモンド』9月30日号の特集では、その内幕を徹底取材した。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 山口圭介)