今回は、先の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)で表明された途上国に対する食料援助について筆者なりの考えを述べたい。

 そうした必要性を感じたのは、多くのメディアが当を得たとはいえない報道を繰り返しているためだ。それは、緊急の食料供給支援や国際的な食料備蓄体制の整備を、あたかもアフリカなど途上国に対する食料支援の目玉であるかのように取り上げていた点である。
 
 国際的な備蓄体制が食料逼迫問題解決の決め手とならないことは前回述べた。市場が過剰と逼迫を交互に繰り返している頃ならば、過剰なときに備蓄して、逼迫時に放出すればよいが、一本調子で逼迫が進んでいるときに、市場から一定量を隔離すれば、相場にさらなる上昇圧力をかけてしまう恐れすらあるからだ。

 一方、緊急の食料供給支援は、貧困層の生命を救う点で短期的には不可欠なものであったとしても、長期的にその国が存続していけるかどうかの状況の整備にはならない。それどころか、中長期でみれば、支援先の国々の農業生産を抑える効果を持つことから、最終的にアメリカの農家を喜ばすだけに終わる可能性もある。

 では、洞爺湖サミットでは、そうした問題点を踏まえたうえで、根本的な解決策を探る本質論は交わされたのだろうか。実は交わされていたと思われる。具体的には、途上国における農業生産の拡大支援である。ただ、その本筋論に移る前に、途上国にとって、昨今の食料価格高騰がどれほど深刻なものであるのかをきちんと説明しておきたい。途上国がなぜ穀物の輸入国になっているかという基本的なところを押さえておかないと、おそらくその根本的な解決策の意義は理解しにくいからである。

アジアの穀物輸入は飼料用
穀物をそのまま食べるアフリカへの影響は甚大

 まず解いておきたい誤解がある。それは、途上国が農産物を輸出して先進国が工業製品を輸出しているという認識だ。実際の構図はまったく異なる。途上国の多くは、工業製品だけでなく農作物についても輸入品に依存しているのである。