上海のハイウェイの両側に林立するさまざまな意匠のビル群は、現代都市に脱皮した上海を物語るシンボルでもある。あまりの発展の勢いに「乱開発では」と思うこともあるが、それらは「高質な都市環境、高効率なインフラ、高水準な都市管理」――というスローガンを土台に、綿密に練られた都市計画の上に成り立っている。
中国最大の経済都市として国際経済、金融、貿易、物流の拠点としての性格が与えられ、その過程のなかで、浦東開発が進められ、浦西からは工場が姿を消し、居住区が整備され、交通網が発展し……といった具合に、計画的な都市作りが進められてきたのだ。
短期的に高度な発展を遂げたという意味では興味深い都市であるし、この上海モデルは多くの専門家の関心を惹きつけてやまない。国内外から多くの人口を引き寄せるのも、上海の街に魅力があってこそだ。だが、筆者は最近、「安全な都市づくり」という視点がいまだ十分ではない、と思うことがしばしばある。
記憶に新しい地下鉄事故だが
今まで大事故がなかったのが不思議なほど
その典型例が、今回の284人の負傷者を出した地下鉄10号線の追突事故である。そもそも地下鉄にまつわるハプニングは「車両のドアが開かない」「行きすぎてホーム所定の位置に後戻りする」「人が乗降中でも容赦なくドアを閉める」「人を挟んだまま運行する」など、枚挙に暇がない。今まで大事故がなかったのが不思議なくらいである。
筆者が驚くのは、運転手も車掌も、そしてプラットフォームに立つ駅員らがみんな20代の若手だということだ。「○両目は扉が開かないので、他のドアから乗降してください」とアナウンスするその声は「学生さん?」と思うくらいで、「こんな若い子が車両の運行を管理しているんだ」と“感心”させられることもしばしばだった。プラットフォームに立つ係員もまた“あどけなさの抜けない顔ぶれ”が少なくない。
案の定、9月27日の地下鉄10号線追突事故は信号機の故障によるもので、電話を使って信号を送ったという作業に人的ミスが指摘されているが、市井では「電話を使って信号を送る作業は熟練が要求される。経験のなさが仇となってしまった可能性もある」とささやかれている。