本業のコンセプトを定義し直し
新たな顧客をつかまえた好例

 こうした施策を継続することで、横浜スタジアムの観客動員数は110万人(2011年)から球団史上最多の194万人(2016年)まで、飛躍的に増えていったのです。

 本連載の中で私が提唱してきた「顧客ずらし戦略」は、「企業が持つ本質的なアセット(資産)を生かして、新たなビジネスを展開し、これまでとは異なる顧客をつかまえること」と定義してきました。

 ベイスターズの事例は、「新たなビジネスを展開した」わけではないでしょう。ただ、「企業が営む主事業(プロ野球の興行)のコンセプトを見つめ直し、振り向ける先をずらしたことで、これまでとは異なる顧客をつかまえることに成功した」、そんなふうに表現することはできると思います。

 必ずしもビジネスそのものを変えずとも、本業のコンセプトを定義し直すことで新たな顧客はつかまえられる。これも「顧客ずらし戦略」の一形態を示しているものと言ってよいのではないでしょうか。

 かつてプロ野球(セ・リーグ)のビジネスモデルは、ジャイアンツ戦を中心とした放映権料収入によって支えられていました。放送局を顧客とするBtoBビジネスであり、球団は中継を通じて1000万人の視聴者を楽しませていたわけです。

 しかし、時代は変わり、昔のような高視聴率がとれなくなったプロ野球中継が、地上波放送からほとんど消滅してしまったことは周知の通りです。多くの球団が苦しい経営を強いられるようになったのも、放映権料収入の減少が一因となっていることは想像に難くありません。経営を始めた当初に池田氏が感じ取った「野球を見せてやる」といった球団内の空気も、そうしたテレビ時代の名残だったのかもしれません。