「社長を40歳に」しないと日本の大企業は変われない

今回は、株式会社プロノバ 代表取締役社長の岡島悦子さんをゲストに迎え、岡島さんとの対談をお届けします。岡島さんは、「日本に“経営のプロ”を増やす」ことを使命として掲げ、経営チーム強化コンサルタント、ヘッドハンター、リーダー育成のプロとして活躍するほか、丸井グループやアステラス製薬を始めとする複数の企業の社外取締役を務めています。そして、私も時折アドバイスを頂く、長年の先輩でもあります。そんな岡島さんと日本企業の新規事業の創出や、デジタルイノベーションの実現がなぜ加速しないのかを中心に、40歳社長待望論、これからの時代の人材育成、寿命100年時代の身の立て方まで、徹底討論してみました。前半では、イノベーションを阻害する組織の問題点について深く切り込みます。

なぜ大企業はデジタル投資に
踏み出せないのか

平井 岡島さんの『40歳が社長になる日』(幻冬舎)を拝読しました。「デジタル・ネイティブに会社を任せろ」とか、サクセッション・プランニング(後継者育成計画)の話とか、まさに僕が言いたかったことがいろいろ書かれていて、大いに共感しました。今日はエスタブリッシュの大企業からスタートアップまで、多くの会社経営の現場を知る岡島さんに、企業の変革やイノベーションを促すにはどうすればいいかを中心にうかがおうと思っています。

 いきなり大きなテーマですが、なぜ大企業でイノベーションがなかなか起こらないのか。大企業の多くは非常にコンサバティブというか、殊にデジタルの文脈における大型の新規投資やM&Aでなかなか思い切った手を打てていませんよね。

 アメリカのベンチャー・キャピタル(VC)投資額はすでに6-7兆円規模で推移していますが、日本の資金調達額はやっと2000億円程度というのが実情です。

 僕達BCGデジタルベンチャーズ(BCGDV)も、企業の皆さまにいろいろな協業提案をしていますが、途中までは鼻息荒く前向きでも、「実現にはこのくらい資金が必要です」と言うと、途端に腰が引けてしまうことがあります。部長層に認められた決裁権限の問題もあるのだとは思いますが、機を逸するようなケースもままあり、歯がゆく感じることがあります。