平井 グローバル企業ならもちろん海外に子会社がありますし、そうでなくても関連会社やベンチャーに送り込むということはできますね。ただ、横並びをよしとする、「平等主義」の日本企業では、選ばれなかった人がモチベーションを落としてしまうということもあると思うのですが。

エリートほど無難で大過なく
何十年も過ごさないといけない

岡島悦子さん

岡島 選ばれなかったくらいでモチベーションを落とすな、自分ができることをいまいる場所で頑張れ、という話です。

 そもそも、全員が社長を目指す必要はないんですよ。考えてみれば社長って本当に割に合わない役職なのかもしれません。確かにお客様や社会にインパクトを与えられるし、従業員、顧客、株主というステークホルダーを幸せにするという大義はあり、それは特別なことです。

 しかし、知力、体力、気力、どれをとっても超一流でなければならないうえ、コンプライアンスを遵守し、私生活も清廉潔白に保たねばならない。正解が分からないような局面でも、最後は1人で意思決定しなければならない、非常に孤独な立場でもあります。いくらノブレス・オブリージュとはいえ、強烈な信念や、この仕事を成し遂げなければ死んでしまう、といったくらいの圧倒的な熱量と突破力がなければ、とてもやりきれるものではありません。

平井 一種パラノイア的なね。

岡島 それくらい強い思いをもって、ステークホルダーのために頑張れる、突き抜けられる人だけが社長になるべきです。

平井 日本企業の社長はまだまだ生え抜きが多いですが、社長候補も含め、優秀な社員の飼い殺しも問題ですね。

岡島 優れた企業はさまざまなビジネスノウハウを蓄積した結果、何のためのノウハウだったのか、何のために使っていたKPI(重要業績評価指標)だったのか、手段自体が目的化して、わからなくなってしまうということがあります。組織の最適化が洗練されすぎて、社員もその最適化の引力に飲み込まれてしまう。優秀な社員は優秀な課題解決マシンになってしまうんです。

 社長も含め、リーダーは課題設定ができなければならないのに、組織のなかで課題解決だけしているうちに、課題設定そのものの思考が鈍ってしまう。課題解決マシンにならないためには、意思決定の場数を踏むしかないんです。