再犯率が高い痴漢
カナダが採用している有効策とは

 これほど社会問題化している「痴漢」に対して、これまで有効な対策がほとんどされてこなかったのはなぜなのか。

「やはり先ほどもお伝えしたように、痴漢を性欲の問題に矮小化することで『性欲が強いのならどうしようもない』という誤解を生んでいることが大きいと思います。また、たとえば母親が娘に対して『そんな短いスカート履いたら、痴漢に遭うわよ』と注意するのは家庭で見られる光景ですが、『そんな格好をしているから痴漢されても仕方がない』と女性側の自己責任論にすり替える人も多い。加害者のみならず日本社会全体が痴漢行為に対して歪んだ見方をしている象徴的な一例といえます」

 この「女性側にも問題がある」という女性側の落ち度を責める男性側の身勝手な論理が、無意識のうちに日本社会に蔓延していることが、痴漢問題を解決するための具体的な議論が進まなかった理由なのだ。

 言うまでもなく、痴漢行為は立派な犯罪。被害者側の落ち度を責めるのではなく、斉藤氏は「性犯罪は男性の問題であり、あくまでも加害者側である男性をどのように治療につなげていくかが重要」という。日本社会は、これからどのようにして痴漢に対処していくべきなのか。

「痴漢は性犯罪の中でも特に再犯率が高いので、いかに再犯を防止するかが被害者を減らすためには重要です。対応策としては、米国で行われているドラッグコートという、薬物依存から回復させるための制度のように、執行猶予判決とセットにした治療プログラムを組むべきでしょう。カナダでは、出所後に仮釈放の条件として一定期間治療を義務化にしており、もし遵守事項違反をしたら、刑務所に再収監するというシステムを取り、再犯率を見事に下げています」

 もちろん、これまでも行われてきた痴漢防止バッジ、痴漢行為防止を訴える効果的なポスターを電車内に掲示するなど、女性が痴漢する加害者に対して、より声を上げやすい環境づくりも必要になるだろう。

 小池百合子・東京都知事は、2020年東京オリンピック開催までに都内の満員電車解消を目指しているが、これは痴漢撲滅をしていく意味でも重要な施策になるはず。痴漢の正しい認識を社会で共有し、国や鉄道会社、そして専門治療機関が三位一体となって効果的な対策を組織的に行っていくことを期待したい。