打ちのめされて、落ち込んで…
でも負荷をかけられる人間関係こそ大切

大塚:35歳のターニングポイントまでは、付き合っていたのはモデルさんやカメラマンさん、編集者さんなど、いわゆる雑誌に携わる業界の方。また、それまではおもしろいものをつくっていけばよかったのが、今度は経営に携わることで、ビジネスに関わるお金のシビアさという新たな経験をされたわけですね。そこで出会った経沢さんのような、おもしろいものをお金に変える知恵を持った人との付き合いが、渡辺さんの人生を大きく変えていったのだと。

渡辺:変わっていきましたね。編集者を辞めようと思った理由のもう一つが、刺激がなくなったというか、誰かのすごさに打ちのめされることがなくなったんですよ。すごく居心地がいいというか、楽な環境だったんですね。

 逆に、経沢さんみたいなビジネスで活躍している人の話を聞くと、あまりの自分の無知さとか未熟さとかに落ち込むんですけれど。だから打ちのめされるんですよ、あまりにも自分がダメで。それがまだ20代ではなくてもう35歳なのに、こんなに世間知らずで、こんなにお金のことも何もわからなくてと落ち込むんだけど、でも逆に言うと、それがすごく刺激になるわけです。

大塚寿さん

大塚:おっしゃっていること、すごくよくわかるな。そういう自分に負荷をかけられる良好な人間関係って、すごく大切なんですよ。なぜ人付き合いが重要なのかといえば、広い人脈がモノを言うとかいうことじゃなくて、異質な他者と付き合うことで、自分には到達し得ない世界にたどりつけるということなんですよね。だからこそ、付き合う人で未来は変わるということなんです。

 楽な人間関係って、決して成長にはつながらないんですよ。打ちのめされて、落ち込んで、でもあの人みたいになりたい! という強い憧れを持ってそこに近づこうと努力することが、変化を起こす最大の近道だと、『30代を後悔しない50のリスト』には書かせてもらいました。

渡辺:欠けているものが、たくさんあることに気づかせてもらえたのは、とてもよかったなと思います。

大塚:なぜ30代で付き合う人を考えることが重要なのかといえば、「付き合う人の選択」という意味では、20代では早すぎて、40代では遅すぎるからなんです。20代ではどんどんいろいろなタイプの人と付き合って、良いところも悪いところも見て、その中で人を見る目を養う必要がありますが、40代では会社でも役職についているし、すでにキャリアも築かれてしまっているので、フラットな付き合いがしにくいのです。

 30代は、ちょうどいいタイミングなのです。この10年で自分に良いプレッシャーをかけられる良好な人間関係を「選択」していくことが、その後の人生を左右することになるのです。そのプレッシャーによって、いかに自分を高められるかが30代の大きなポイントになりますね。

 いまの30代の方の刺激になる、大変いいお話でした。ありがとうございました(談)。(2011年10月11日収録)

12万部のベストセラーとなった『40代を後悔しない50のリスト』に続く[30代編]として、大塚寿さんの新刊『30代を後悔しない50のリスト』が発売されました。前作同様、1万人のインタビューを通してわかった等身大でリアルな50個の後悔から、明日を確かに生きるヒントが見つかります。人生の土台となる30代。格差の生まれるこの10年をいかに過ごすべきかを、本書から学んでみてください。

 

30代を後悔しない50のリスト―1万人の失敗談からわかった人生の法則

大塚寿[著] 定価1500円(税込)
ダイヤモンド社
四六判・248ページ

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 【特別対談の日程
●第1回:「藤原和博×大塚寿」(前編)
●第2回:「藤原和博×大塚寿」(後編)
●第3回:「川北義則×大塚寿」(前編)
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●第5回:「桑野克己×大塚寿」(前編)
●第6回:「桑野克己×大塚寿」(後編)
●第7回:「渡辺佳恵×大塚寿」(前編)
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